書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『不倫』 パウロ・コエーリョ  / 不倫をする側とされた側、悩む人が多いのは

『不倫』 パウロ・コエーリョ 木下眞穂/訳 角川文庫 2019.3.31読了 私がパウロ・コエーリョさんの『アルケミスト』を読んだのは、読書の楽しさを知り、小説を貪るように読み始めた頃だったと思う。当時は翻訳された作品を読み慣れておらず、読んだ後も日本…

『東京プリズン』 赤坂真理 / 平成の30冊に選ばれたらしい

『東京プリズン』 赤坂真理 河出文庫 2019.3.27読了 ほとんどが最終章のためのお膳立てのようだ。いくつかの時代と虚構が行ったり来たりして、迷子になりながら読み進めていく。文章はすっきりとしておりむしろ読みやすいのだが、何故かあまり入ってこなかっ…

『この世にたやすい仕事はない』 津村記久子 / 色々な仕事・職場を経験すると自分のことがよりわかる

『この世にたやすい仕事はない』 津村記久子 新潮文庫 2019.3.26読了 14年間勤め上げた仕事に燃え尽き投げ出してしまい、ゆるーい仕事を求めて転々と職を変えていく36歳女性の話。世の中には、本当に色々な仕事があり、そしてどんなことでも仕事になるんだな…

『蠕動で渉れ、汚泥の川を』 西村賢太 / これぞ西村さんの私小説、人間らしさに溢れている

『蠕動で渉れ、汚泥の川を』 西村賢太 角川文庫 2019.3.24 読了 蠕動(ぜんどう)、あまり目にしない単語である。虫が付いているから虫の動きに関することだろうか。調べてみると、①ミミズなどの虫が身をくねらせてうごめきながら進むこと。②筋肉の収縮波が徐…

『レディ・ジョーカー』 髙村薫 / 女性が描く男性心理

『レディ・ジョーカー』上・中・下 髙村薫 ★★ 新潮文庫 2019.3.22読了 言わずと知れた、グリコ・森永事件から着想を得たストーリー。同じモチーフの塩田武士さんの『罪の声』も良かったが、緻密な構成と深い人間考察、行間から漂うおどろおどろしさは髙村さ…

『本を読む本』 M.J.アドラー C.V.ドーレン / 本を読んで、すうっとした気持ちになりたい

『本を読む本』 M.J.アドラー/C.W.ドーレン 外山滋比古/槇未知子 訳 講談社学術文庫 2019.3.11読了 本当は、ショーペンハウアーの『読書について』を読み、耳に痛い話を心身ともに受け入れようと覚悟していたのだが、立ち寄った書店に在庫がなく、それなら…

『国宝』 上下 吉田修一 / 死ぬまで舞台に立ちたいのは皆同じ

『国宝』 上 青春篇 下 花道編 吉田修一 朝日新聞出版 2019.3.10読了 私は歌舞伎を鑑賞したことがまだない。去年友人が「女子歌舞伎」なるものを習い始めて、その発表会を観に行ったことがあるだけだ。素人が演技していることもあるが、慣れない衣装、大きな…

『星を継ぐもの』 ジェイムズ・P・ホーガン / 理系の本も読もう

『星を継ぐもの』 ジェイムズ・P・ホーガン 池 央耿 /訳 創元SF文庫 2019.3.5読了 普段だったらあまり手に取らない分野の小説だが、創元SF文庫で100冊突破!というロングセラーだったので気になり読んでみた。昔、立花隆さんの『宇宙からの帰還』を読…

『蓼喰う虫』 谷崎潤一郎 / 夫婦の在り方はさまざま

『蓼喰う虫』 谷崎潤一郎 小出楢重/画 岩波文庫 2019.3.3読了 谷崎潤一郎といえば、『痴人の愛』『細雪』『卍』『春琴抄』が抜群に有名であるが、『蓼喰う虫』を読んでいる人はそう多くはないかもしれない。私もタイトルを知っていただけで初読みである。「…

『黙約』 ドナ・タート / 人の気持ちは変わるけれど変わらない

『黙約』 上下 ドナ・タート 吉浦澄子/訳 ★★★ 新潮文庫 2019.3.2 読了 読んでいる間は勿論のこと、読み終えた後しばらくの間も興奮が冷めやらないほど、久しぶりに夢中になれる本に出会えた。1月に『村上さんのところ』を読んで村上春樹さんがドナ・タート…