書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『渦 妹背山婦女庭訓魂結び』大島真寿美 / もっと浄瑠璃の世界にいざなえたまえ

『渦 妹背山婦女庭訓魂結び』 大島真寿美 文藝春秋 2019.9.26読了 第161回直木賞受賞作。大島さんの名前は初めて知った。と、カバー裏表紙を見たら、過去の小説に『ピエタ』とあった。あ、この作品は書店に並んでるのを見たことがある。読んでない作品でも見…

『嵐が丘』 エミリー・ブロンテ / ヒースクリフ、彼の名は忘れられない

『嵐が丘』上下 エミリー・ブロンテ 河島弘美 / 訳 岩波文庫 2019.9.24読了 サマセット・モームが「世界の十大小説」として挙げた中の1冊が、この『嵐が丘』である。ブロンテ姉妹の1人、エミリー・ブロンテが唯一残した小説、私が読むのは確か3回めだと思う…

『罪の轍』奥田英朗 / 現代だからこそ読むべき昭和のミステリ

『罪の轍』奥田英朗 ★ 新潮社 2019.9.19読了 頁をめくる手が止まらない、だけどじっくり読みたい、そんな読み応えのある小説だった。奥田さんの作品は、『最悪』、『邪魔』、『オリンピックの身代金』は良かったのだが、それ以降は筆力が落ちてしまったのか…

『ニックス』ネイサン・ヒル / 帯に書かれた宣伝文句を見極める

『ニックス』ネイサン・ヒル 佐々田雅子/訳 早川書房 2019.9.14読了 帯に、「ジョン・アーヴィング絶賛!」とあれば、思わず手に取ってしまうだろう。しかし、ジョン・アーヴィングの本は数冊しか読んだことがないし、彼の作品が自分に合うかといえば、今の…

『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ / 優れた芸術作品を世に広める人たち

『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ 文藝春秋 2019.9.8読了 東京、上野にある国立西洋美術館で現在展示されている「松方コレクション」を観る前に、読んでおこうと思った。おそらく、この本も展示に合わせて発売されたのだろう。日本に、西洋の優れた…

『平凡』角田光代 / なんでもない日々の暮らしが一番

『平凡』 角田光代 新潮文庫 2019.9.7読了 世の中の読書好きな女性がたいていそうであるように、私も角田光代さんが大好きである。もちろん女性に限らないが、角田光代さん、江國香織さん、小川洋子さん、柚木麻子さん、山本文緒さんらは女性読者が圧倒的に…

『山の音』川端康成 / 死期を感じること

『山の音』川端康成 新潮文庫 2019.9.5読了 言わずと知れた、川端康成さんの名作、『山の音』である。戦後文学の最高峰と謳われる小説だが、まだ未読であった。何の小説だっただろうか、主人公が常に持ち歩いていた本がこの『山の音』だったことから、そうい…

『IT』スティーヴン・キング / 自分の「IT」をどうやって乗り越えるか

『IT』1~4 スティーヴン・キング 小尾芙佐/訳 ★ 文春文庫 2019.9.3読了 ずっと前から気になっていた作品である。1990年の映画も、ホラー映画史上最大のヒット作と言われている2017年のリメイク映画も、実は観ていない。怖いピエロ(ペニーワイズ)の画…