2019-01-01から1年間の記事一覧
『充たされざる者』カズオ・イシグロ 古賀林幸/訳 ハヤカワepi文庫 2019.10.3読了 おそらく、カズオ・イシグロさんの小説(日本語訳されたもの)の中で一番の長編であろう。文庫本ではあるが、分厚いし重いし、値段もいい。940頁、1,500円。正直、特別面白…
個人情報の管理本サイト(https://honzaru.hatenablog.com/)(以下、当サイト)は、お問い合わせいただいた内容についての確認・相談、情報提供のためのメール送信(返信)の目的以外には使用しません。また知り得た個人情報を第三者に開示することは、警察…
『渦 妹背山婦女庭訓魂結び』 大島真寿美 文藝春秋 2019.9.26読了 第161回直木賞受賞作。大島さんの名前は初めて知った。と、カバー裏表紙を見たら、過去の小説に『ピエタ』とあった。あ、この作品は書店に並んでるのを見たことがある。読んでない作品でも見…
『嵐が丘』上下 エミリー・ブロンテ 河島弘美 / 訳 岩波文庫 2019.9.24読了 サマセット・モームが「世界の十大小説」として挙げた中の1冊が、この『嵐が丘』である。ブロンテ姉妹の1人、エミリー・ブロンテが唯一残した小説、私が読むのは確か3回めだと思う…
『罪の轍』奥田英朗 ★ 新潮社 2019.9.19読了 頁をめくる手が止まらない、だけどじっくり読みたい、そんな読み応えのある小説だった。奥田さんの作品は、『最悪』、『邪魔』、『オリンピックの身代金』は良かったのだが、それ以降は筆力が落ちてしまったのか…
『ニックス』ネイサン・ヒル 佐々田雅子/訳 早川書房 2019.9.14読了 帯に、「ジョン・アーヴィング絶賛!」とあれば、思わず手に取ってしまうだろう。しかし、ジョン・アーヴィングの本は数冊しか読んだことがないし、彼の作品が自分に合うかといえば、今の…
『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ 文藝春秋 2019.9.8読了 東京、上野にある国立西洋美術館で現在展示されている「松方コレクション」を観る前に、読んでおこうと思った。おそらく、この本も展示に合わせて発売されたのだろう。日本に、西洋の優れた…
『平凡』 角田光代 新潮文庫 2019.9.7読了 世の中の読書好きな女性がたいていそうであるように、私も角田光代さんが大好きである。もちろん女性に限らないが、角田光代さん、江國香織さん、小川洋子さん、柚木麻子さん、山本文緒さんらは女性読者が圧倒的に…
『山の音』川端康成 新潮文庫 2019.9.5読了 言わずと知れた、川端康成さんの名作、『山の音』である。戦後文学の最高峰と謳われる小説だが、まだ未読であった。何の小説だっただろうか、主人公が常に持ち歩いていた本がこの『山の音』だったことから、そうい…
『IT』1~4 スティーヴン・キング 小尾芙佐/訳 ★ 文春文庫 2019.9.3読了 ずっと前から気になっていた作品である。1990年の映画も、ホラー映画史上最大のヒット作と言われている2017年のリメイク映画も、実は観ていない。怖いピエロ(ペニーワイズ)の画…
『狂王の庭』小池真理子 角川文庫 2019.8.23読了 恋愛小説である。こういった恋愛ひとすじの小説を読んだのも久しぶりな気がする。10代、20代のころは恋愛小説が好きだったはずなのに、最近は全くそう思わない。若い時は、そもそも現実において「恋愛」が全…
『燃えあがる緑の木』 大江健三郎 第一部 「救い主」が殴られるまで 第二部 揺れ動く(ヴァシレーション) 第三部 大いなる日に 新潮文庫 2019.8.21読了 たまに、大江さんの小説が読みたくなる。読み始めて、あぁ、やはり難しいな、とか、よくわからないな、…
『三体』 劉 慈欣(りゅう・じきん) 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ / 訳 早川書房 2019.8.17読了 今どこの書店に行っても、必ず積み上げられているであろう単行本。SF小説はそんなに好きなわけでもないのだが、あまりにも話題になっているため気になって…
『夏物語』 川上未映子 ★★ 文藝春秋 2019.8.14読了 芥川賞を受賞した『乳と卵』と繋がっている話のようだ。川上未映子さんの作品を初めて読んだのが『乳と卵』だったので、比較的覚えていた。第一部はほとんど続きといってもいいような感じで、途中に日記が…
『「カッコいい」とは何か』 平野啓一郎 講談社現代新書 2019.8.12読了 平野さんは、小説以外でこのテーマをずっと書きたくて温めていたそうだ。これを読んだ後、なんだか気軽にカッコいいという言葉を使うのが憚られるような思いになった。「カッコいい」と…
『ビビビ・ビ・バップ』 奥泉光 講談社文庫 2019.8.10読了 いつも思うのだが、未来を描くディストピア小説を書く人の頭のなかはどうなっているんだろう?不思議なことこの上ない。現代ものは特段問題ないのは言わずもがな、歴史小説なら過去の文献を調べたり…
『夏の騎士』 百田尚樹 新潮社 2019.8.3 読了 43歳の遠藤宏志が、小学生の頃のひと夏の思い出を回想するストーリーである。読み心地は、さすが百田さん、抜群に良い。誰もが読みやすく、誰もが読了後には爽快な気持ちになると思う。 特に男の子であればほと…
『不時着する流星たち』 小川洋子 角川文庫 2019.8.1読了 小川 洋子さんの小説は繊細だ。長編小説でもそうだが、短編であればなおさら、丁寧に扱わないと壊れそう。小説が、本が、壊れるという表現はおかしいのに、何故だかそう思わせる。 この短編集は、そ…
『赤い月』 上・下 なかにし礼 ★ 岩波現代文庫 2019.7.31読了 波子たちが牡丹江からハルビンへ向かう軍用列車に乗っている20日間の出来事が壮絶である。汽車が止まる度に、ソ連軍の攻撃からなんとか逃げ、満鉄社員に金目の物をあげて列車を動かしてもらい、…
『戦後日記』 三島由紀夫 中公文庫 2019.7.28読了 三島由紀夫さんの日記作品集が中公文庫から刊行された。昭和23年から42年までの間に、日記の体裁で書かれたエッセイを集めたものである。三島さんの小説は大好きでよく読むのだが、小説以外をじっくり読んだ…
『春の戴冠』1〜4 辻邦生 中公文庫 2019.7.25読了 傴僂(せむし)のトマソが不気味なほどの存在感を発揮している。せむしという言葉は日本では差別用語として禁じられていると思うが、何故かせむしの人は小説においてキーとなる人物であることが多い。せむし男…
『小僧の神様・城の崎にて』 志賀直哉 新潮文庫 2019.7.10読了 ぼんやりとテレビを見ていたら、城崎温泉が映し出されていた。懐かしい。城崎温泉には2回訪れたことがある。浴衣を着て、地図を手に、いくつかの温泉を巡った記憶がある。そのテレビ番組では、…
『本格小説』上・下 水村美苗 ★★ 新潮文庫 2019.7.8 読了 やはり、面白かった。この小説を読むのは2回目である。10年以上前に読んだ時にも興奮したことを覚えているが、再読してもやはり物語世界に貪るように入っていけて、読んでいる間はじっくりと堪能す…
『凍』(いて) トーマス・ベルンハルト 池田信雄/訳 河出書房新社 2019.7.1読了 これで、「いて」と読むらしい。まるで雪の結晶であるかのように、タイトルが凍えている。オーストリアの作家、トーマス・ベルンハルトさんのことは今まで知らなかった。そもそ…
『旅をする木』 星野道夫 文春文庫 2019.6.21読了 大型書店に行くと、たいてい文春文庫の平置き棚の前にベストセラーとして積み上げてある。だから、この本の存在は随分前から知っていて、いつか読みたいとは思っていた。しかし、紀行文・短編であるためか、…
『慈雨』 柚月裕子 集英社文庫 2019.6.19 読了 慈雨(じう)・・・万物をうるおし育てる雨。また、ひでりつづきのときに降るめぐみの雨。 柚月裕子さんの作品は、よく目にしていたが実際に読むのは初めてであった。刑事もの、ハードボイルドな作風というイメー…
『パピヨン』 上・下 アンリ・シャリエール 平井啓之 / 訳 河出文庫 2019.6.16 読了 私の中で脱獄ものと言えば、吉村昭さんの『脱獄』、ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』、そして金字塔、アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト博』である。ど…
『椿宿の辺りに』 梨木香歩 朝日新聞出版 2019.6.11読了 一体、どんな話なんだろう?そもそも、「椿宿」って何と読むのだろう、つばきやど?つばきしゅく?地名であろうか。帯に書かれてあるキャッチコピーも、てんでばらばらな単語が並び、よくわからない感…
『改訂完全版 占星術殺人事件』 島田荘司 講談社文庫 2019.6.6読了 自分が好きそうな本を選んで欲しいと言われて、何冊か人に選んだ本の中の一冊である。どうやら、あまり気に入らなかったのか読む気配がない。たいてい人に本を勧める時は、その人がよく読ん…
『わたしたちが孤児だったころ』 カズオ・イシグロ 入江真佐子/訳 ハヤカワepi文庫 2019.5.30読了 カズオ・イシグロさんの小説はじっくりと時間をかけて読む。イシグロさんが本当に伝えたいことがどこに潜んでいるかわからないから。訳文であっても損なわれ…