書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『ゲバラ漂流 ポーラースター2』海堂尊/ラテンアメリカの近代史を学ぶかのように

『ゲバラ漂流 ポーラースター2』海堂尊 文春文庫 2020.1.30読了 前回読んだポーラースターシリーズの第2巻である。医師免許を取得したゲバラが、再び旅に出る。今度は1人で。しかし途中から太っちょロホ弁護士と再会し、なんの因果か一緒に行動をすることに…

『ゲバラ覚醒 ポーラースター1』海堂尊/自由奔放なゲバラとピョートルの冒険

『ゲバラ覚醒 ポーラースター1』海堂尊 文春文庫 2020.1.25読了 キューバ革命の英雄、チェ・ゲバラ氏といえば、どんな人物かそして何をしたのかを具体的に知らなくても、星のマークとその精悍な顔つきから壁画やマークになっており誰もが目にしたことがある…

『手のひらの京』綿矢りさ/目に見えない土地の力

『手のひらの京(みやこ)』綿矢りさ 新潮文庫 2020.1.22読了 なんとなく手にして読んだ本。作者の綿矢さんがまさに京都出身で、初めて京都を舞台にして書いた小説だ。私が初めて京都に行ったのは中学生の時の修学旅行。その後も何度か訪れて、他の人と違わ…

『オリヴァー・ツイスト』チャールズ・ディケンズ/生まれ育った環境にも屈しない善良な心

『オリヴァー・ツイスト』チャールズ・ディケンズ 加賀山卓朗/訳 新潮文庫 2020.1.20読了 イギリスの小説は大好きである。ディケンズ、ブロンテ姉妹、サマセット・モーム、ヘンリー・ジェイムズが描くような、古き良き時代の格調高い英国の雰囲気漂うものが…

『マイ・ストーリー』ミシェル・オバマ/自分のことを知り、語り、相手を受け入れれば道は開ける

『マイ・ストーリー』 ミシェル・オバマ 長尾莉紗・柴田さとみ/訳 ★★★ 集英社 2020.1.18読了 世界45言語で翻訳され、1千万部突破のベストセラー。前アメリカ合衆国大統領、バラク・オバマ氏の妻、ミシェル・オバマさんの自伝である。現在のトランプ大統領の…

『堆塵館』エドワード・ケアリー/ケアリーの世界へようこそ

『堆塵館(たいじんかん) アイアマンガー三部作1』エドワード・ケアリー 古屋美登里/訳 東京創元社 2020.1.13読了 確かに書店に並んでいた時からこの表紙は印象深かった。でも、幻想文学かな、子供向けなのかな、となかなか読むまでに至らなかったのだ。…

『若冲』澤田瞳子/奇抜で美しい独特の絵を描き続けた

『若冲』澤田瞳子 文春文庫 2020.1.11読了 数年前に上野にある東京都美術館で開催された「若冲展」、行きたいと思っていたのだが、4時間も並ぶのは耐えきれないなと結局行かずに終わってしまった。数点は何かの展示会で観たことはあるが、若冲氏の作品を飽く…

『赤い髪の女』オルハン・パムク/父と子の物語、見つめる母

『赤い髪の女』オルハン・パムク 宮下遼/訳 早川書房 2020.1.9読了 ★ 私の敬愛するオルハン・パムク氏の新作だ。思えば、トルコに興味を持つようになったのも、彼の『僕の違和感』という作品を読んでからだった。街に響き渡るボザ売りの声を生で聴きたいと…

『孤独の発明』ポール・オースター/孤独でないと物語は書けない

『孤独の発明』ポール・オースター 柴田元幸/訳 新潮文庫 2020.1.6読了 年末に読んだ『ムーン・パレス』に次いで、オースター2作目である。本作品は、作家として名を馳せる前に書かれたもののようで、初期の作品と言える。この物語は大きく2部構成になって…

『また、桜の国で』須賀しのぶ/激動の時代を生き抜いたポーランド

『また、桜の国で』須賀しのぶ 祥伝社文庫 2020.1.5読了 名前もよく見かけるし、少し前から気になっていた作家の1人だったが、ライトノベルで有名な人だし、と億劫になっていた。しかしここ数年は一般文芸書を執筆しているようで、数年前の直木賞候補になっ…

『トルストイ民話集 人はなんで生きるか 他四篇』トルストイ/人間の本質を見極める

『トルストイ民話集 人はなんで生きるか 他四篇』トルストイ 中村白葉/訳 岩波文庫 2020.1.2読了 トルストイの晩年の短編が収められている。長編はほとんど読んでしまっているため、最近は短編を読むことが多い。ここにある5編はどれも数十ページ程で内容的…

『ゲームの王国』小川哲/洞察力に優れた登場人物に魅せられる

『ゲームの王国』上下 小川哲 ★ ハヤカワ文庫 2020.1.1読了 いつも帯に騙されるから、大きな期待はせずに(でも新聞やネットで絶賛されているから少しだけ期待)いたけれど、本当にすごい才能の方が現れたと私も思った。そもそも私自身、個人的にSFに苦手意…