書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『パチンコ』ミン・ジン・リー/誰もが産まれる国を選べない

『パチンコ』上下 ミン・ジン・リー 池田真紀子/訳 ★★ 文藝春秋 2020.10.30読了 まるでペルシャ絨毯を思わせるような装幀、色使いは花札のようだ。書店で見かけた時に表紙に一目惚れしたのだが、よく見ると全米図書賞最終候補、オバマ前大統領推薦とある。…

『家霊』岡本かの子/粋のいい短編たち、280円文庫

『家霊(かれい)』岡本かの子 ハルキ文庫 2020.10.26読了 岡本かの子さんの作品を読むのは初めてだ。芸術家岡本太郎さんの母親である岡本かの子さんは、壮絶な人生を歩んだ。瀬戸内寂聴さんの『かの子繚乱』を読んだことが彼女を知ったきっかけだ。熱を帯び…

『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド/かつて黒人奴隷が生き延びるために

『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド 谷崎由依/訳 ハヤカワepi文庫 2020.10.25読了 この本、単行本刊行当時からずっと気になっていた。長らく買おうか迷っていたのだが、今月の文庫本新刊コーナーに平積みされていて迷わずゲット。最近、文庫になるのが目…

『ぐるぐる♡博物館』三浦しをん/行きたい、会いたい博物館

『ぐるぐる♡博物館』三浦しをん 実業の日本社文庫 2020.10.22読了 ちょっとエッセイでも読んで休憩。小説が好きだからどうにも偏りがちだが、なるべく10冊に1冊は小説以外を読むようにしている。しかし振り返るとここ最近は小説が連続していたから、少し読む…

『郷愁』ヘルマン・ヘッセ/青春とお酒、そして本を読む時の気の持ちよう

『郷愁』ヘルマン・ヘッセ 高橋健二/訳 新潮文庫 2020.10.21読了 ヘルマン・ヘッセさんの処女作であり出世作でもある『郷愁』、原題は『ペーター・カーメンチント』で主人公の名前である。いつも通り新潮文庫の表紙は野田あいさんのイラストで、なんとも言…

『風よあらしよ』村山由佳/怒涛の人生、道を自ら切り開く

『風よあらしよ』村山由佳 ★ 集英社 2020.10.19読了 婦人解放運動家、アナキストである伊藤野枝(のえ)さんを描いた評伝小説である。少し前に、瀬戸内寂聴さんの『かの子繚乱』を読み、寂聴さんが書く他の評伝も読みたいと思っていた。伊藤野枝さんの生涯を…

『ナイルに死す』アガサ・クリスティー/文章を疑ってかかる

『ナイルに死す』アガサ・クリスティー 黒原敏行/訳 ハヤカワ文庫 2020.10.15読了 近すぎる。近いうち過ぎる。何がって、『オリエント急行の殺人』を読んでまだ数日しか経っていないのだ。アガサ作品をまた近いうちに読もうとは思っていたけれど、3日後に手…

『獣の戯れ』三島由紀夫/フィルター越しに見る三角関係

『獣の戯れ』三島由紀夫 新潮文庫 2020.10.13読了 当時は新潮社の雑誌に連載されたようだが、三島さんの書き下ろし小説として5作目の中編小説である。タイトルから想像するに、色香漂う官能的な作品かと思っていたがそういうわけでもなかった。しかし言葉と…

『赤毛のアン』モンゴメリ/「想像の余地」を活かそう

『赤毛のアン』L・M・モンゴメリ 松本侑子/訳 文春文庫 2020.10.12読了 これもまた、遥か昔小学生の時に読んだ本だ。アニメでも観たような。少女の成長物語だったと覚えているけど、中身はすっかり忘れている。いまNHKで「アンという名の少女」という『赤毛…

『オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティー/色褪せない名作を味わう

『オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティー 山本やよい/訳 ハヤカワ文庫 2020.10.11読了 英国ミステリの女王、アガサ・クリスティーさんの超超有名な本作を再読した。小説で読むのはかれこれ子供の頃以来かもしれない。映画にもなり日本でも野村萬斎さ…

『星の子』今村夏子/読んでいてずっと苦しい

『星の子』今村夏子 ★ 朝日文庫 2020.10.9読了 人気番組「アメトーーク!」の「読書芸人」で、芸人であり作家でもある又吉直樹さんが一推ししていたのが今村夏子さんの『こちらあみ子』だ。その後『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞した時には、やは…

『ファインダーズ・キーパーズ』スティーヴン・キング/小説を愛しすぎた故に

『ファインダーズ・キーパーズ』上下 スティーヴン・キング 白石朗/訳 ★ 文春文庫 2020.10.8読了 ちょうどひと月ほど前に読んだ『ミスター・メルセデス』の続き、ホッジズ刑事シリーズの2作目である。前作が面白かったからすぐに買っておきスタンバイしてい…

『ガーデン』千早茜/人と一定の距離を保つ

『ガーデン』千早茜 文春文庫 2020.10.4読了 よく書店に並んでいるのは目にしていたが、千早茜さんの小説を読むのは初めてだ。なんとなく、イヤミス系なのかな?と思っていたけど、確か西洋菓子店とつく題名の作品もあったので、色々な作風があるのかなと。 …

『童の神』今村翔吾/エンタメ全開の歴史小説

『童の神』今村翔吾 ハルキ文庫 2020.10.2読了 第163回直木賞は馳星周さんの『少年と犬』が受賞となったが、有力候補と言われていたのは今村翔吾さんの『じんかん』である。選考当時からこの『じんかん』気になっていたのだが、読んだことのない作家さんだか…

『心は孤独な狩人』カーソン・マッカラーズ/誰もが抱える孤独

『心は孤独な狩人』カーソン・マッカラーズ 村上春樹/訳 新潮社 2020.10.1読了 こんな帯の文句が書かれていたら、村上春樹さんのファンは読みたくなるもの。 たとえ、カーソン・マッカラーズさんの名前を知らなくても、フィッツジェラルド、サリンジャーと…