書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『螢川・泥の河』宮本輝|のちの大作へとつながる

『螢川・泥の河』宮本輝 新潮文庫 2021.9.29読了 先日、宮本輝さんの大河大作『流転の海』全9部作を読み、えらく感動した。まだ川三部作を読んでいなかったので、この機会に読むことにした。全てが1冊にまとまったものがちくま文庫から刊行されていたのを知…

『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン|彩りに満ちた老探偵たちとともに

『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン 羽田詩津子/訳 ★★ ハヤカワポケットミステリー 2021.9.27読了 この小説、刊行前から結構話題になっていたので、私も気になってついつい購入した。アガサ・クリスティー著『火曜殺人クラブ』はまだ未読だけれど、ミ…

『満潮の時刻』遠藤周作|入院生活でみえてくるもの

『満潮の時刻』遠藤周作 新潮文庫 2021.9.24読了 久しぶりに遠藤周作さんの小説を読んだ。この作品は没後2年してから上梓されたようで、長編であるのにあまり有名ではない。作品の中にある欠点(時間経過がそぐわない箇所がある等の違和感程度)を補ってから…

『トム・ソーヤーの冒険』マーク・トウェイン|子どもの心と行動

『トム・ソーヤーの冒険』マーク・トウェイン 土屋京子/訳 光文社古典新訳文庫 2021.9.23読了 誰もがこの少年の名前は知っているだろう。私は子供の頃に本を読んだことがあり、いかだに乗っているシーンとペンキ塗りのシーンだけは記憶にあった。 トムはい…

『君は永遠にそいつらより若い』津村記久子|もやもやとした大学生と社会人のはざま

『君は永遠にそいつらより若い』津村記久子 ★ ちくま文庫 2021.9.20読了 なかなか良いタイトルである。本谷有希子さんの作品にありそう。「そいつら」というのが特にいい。津村さんの小説はタイトルのセンスがひときわ抜きん出ていて、読む前から気になり手…

『はつ恋』ツルゲーネフ|初恋なのに冷静さがある

『はつ恋』ツルゲーネフ 神西清/訳 新潮文庫 2021.9.19読了 小説の中での初恋の相手は、ほぼ100%美男もしくは美女である。若い頃には内面から人をみることが出来ず、まずは外面から入るから仕方のないことだとは思うけれど、容姿が普通以下という場合がない…

『流転の海』宮本輝|人間の宿命|なにがどうなろうと、たいしたことはありゃあせん

『流転の海』第一部〜第九部 宮本輝 ★★ 新潮文庫 2021.9.18読了 宮本輝さんの大河大作『流転の海』全9部作を読み終えた。単行本が都度刊行されている時から気になっていたが、あと少しと辛抱して文庫本が揃うまで待っていたのだ。今年の春、ようやく第九部『…

『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティー|1番有名な作品

『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティー 青木久惠/訳 ハヤカワ文庫 2021.9.4読了 クリスティーさんの作品ではおそらく1番有名なのではないだろうか。例え読んだことがなくても、タイトルだけは知っているはずだ。各国で映画化ドラマ化され、オマー…

『生き物の死にざま』稲垣栄洋|自然界を懸命に生きる

『生き物の死にざま』稲垣栄洋 草思社 2021.9.2読了 先日、家の中に入り込んできた蚊を掃除機で吸い込んだ。なかなか叩くチャンスがなく(本当は潰したくないけど家にいるのが気になる)、天井付近にいたのをなんとか仕留めた。蚊は掃除機の中で息絶えると思…

『トリニティ』窪美澄|何かを捨ててより良いものを拾って生きる

『トリニティ』窪美澄 ★ 新潮文庫 2021.9.1読了 トリニティとは、キリスト教でいう三位一体のことだ。三角形に表してバランスを保つような図をたまに見るような気がする。昔仕事でトリニティをサブタイトルにした商品を売ったことを思い出した。この作品では…