書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

◇エッセイ

『作家は時代の神経である コロナ禍のクロニクル2020→2021』髙村薫|コロナ禍でみえたもの

『作家は時代の神経である コロナ禍のクロニクル2020→2021』髙村薫 毎日新聞出版 2021.10.23読了 新型コロナウィルスの新規感染者が急激に減り、このまま第6波も来ないで完全に収束して欲しい。国民の誰もがそう期待し、私たちの生活は実際にコロナ禍以前の…

『生き物の死にざま』稲垣栄洋|自然界を懸命に生きる

『生き物の死にざま』稲垣栄洋 草思社 2021.9.2読了 先日、家の中に入り込んできた蚊を掃除機で吸い込んだ。なかなか叩くチャンスがなく(本当は潰したくないけど家にいるのが気になる)、天井付近にいたのをなんとか仕留めた。蚊は掃除機の中で息絶えると思…

『正弦曲線』堀江敏幸|恋してしまったらしい

『正弦曲線』堀江敏幸 ★ 中公文庫 2021.7.7読了 著者の堀江敏幸さんは、三角関数のサイン、コサイン、タンジェントの「サイン」を書くときには必ず日本語で「正弦」と括弧付きで入れるそうだ。日本語のその響きと、漢字そのものの美しさを愛する所以だろう。…

『大阪』岸政彦 柴崎友香|大人の芳しい上質な随筆集

『大阪』岸政彦 柴崎友香 河出書房新社 2021.6.10読了 生まれ育った街を「地元」という。小さい頃から転勤を繰り返していた私は、どんな環境でもある程度馴染めるという術をおぼえて育った。小学生高学年から一つの地域に長く住んだから、私が「地元」と言え…

『陰翳礼讃・文章読本』谷崎潤一郎|日本の文化と日本語の美しさ|随筆を通俗語にしようよ

『陰翳礼讃・文章読本』谷崎潤一郎 新潮文庫 2021.3.28読了 谷崎潤一郎さんの『陰翳礼讃』『文章読本』という2大随筆と、他に短い作品が3つ収録された随筆集である。どの作品も素晴らしい文章で散りばめられている。日本の文化と日本語の美しさが、これまた…

『生きるとか死ぬとか父親とか』ジェーン・スー|母が繋ぐ父と娘の絆

『生きるとか死ぬとか父親とか』ジェーン・スー 新潮文庫 2021.3.10読了 このジェーン・スーさんという方、私が知ったのは最近なのだが、なかなかおもしろい方のようだ。自らを「未婚のプロ」と称し、生粋の日本人なのに外国人であるかのような名前をつけて…

『街場の天皇論』内田樹|天皇制について考えてみよう

『街場の天皇論』内田樹 文春文庫 2021.2.19読了 2016年8月、当時の天皇陛下が「おことば」を述べられた。著者の内田樹さんは、陛下の「おことば」は、日本人が天皇制について根源的に考えるための絶好の機会を提供してくれたものと感謝の気持ちを以て受け止…

『言葉を離れる』横尾忠則/絵と言葉は本当に正反対か

『言葉を離れる』横尾忠則 講談社文庫 2020.12.29読了 やはり表現者だなぁと心底思う。文章は長ったらしく句読点も少なくて読みにくいのに、人の心を掴む魂を紡いでくる。美術家、横尾忠則さんのエッセイだ。それもある意味「本」「言葉」に対する否定の書と…

『美しいものを見に行くツアーひとり参加』益田ミリ/女子のための旅行ガイド

『美しいものを見に行くツアーひとり参加』益田ミリ 幻冬舎文庫 2020.12.27読了 イラストレーター益田ミリさんの旅行エッセイ。ほっこりしたイラストは見たことがあっても、これが益田ミリさんが描いたものであること、本(エッセイ中心)を多数出されている…

『日日是好日 ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせー』森下典子/日々の気付きを大切に

『日日是好日(にちにちこれこうじつ) ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせー』 森下典子 新潮文庫 2020.11.6読了 朝日新聞が、本のための情報サイトとして「好書好日(こうしょこうじつ)」を運営している。たまに見ることがあるのだが、「好日」繋がり…

『ぐるぐる♡博物館』三浦しをん/行きたい、会いたい博物館

『ぐるぐる♡博物館』三浦しをん 実業の日本社文庫 2020.10.22読了 ちょっとエッセイでも読んで休憩。小説が好きだからどうにも偏りがちだが、なるべく10冊に1冊は小説以外を読むようにしている。しかし振り返るとここ最近は小説が連続していたから、少し読む…

『太陽と鉄・私の遍歴時代』三島由紀夫/肉体と精神・三島たらしめるもの

『太陽と鉄・私の遍歴時代』三島由紀夫 中公文庫 2020.8.22読了 三島由紀夫さんの自伝的エッセイが2篇と、自衛隊駐屯地で自決する少し前のインタビューが収録されている。まぁ、2篇の極端なことったらない。なるべく我慢して巻末の解説は最後に読もうとして…

『不道徳教育講座』三島由紀夫/叡智を感じるエッセイ

『不道徳教育講座』三島由紀夫 角川文庫 2020.7.22読了 いやはや、三島さんは何を書いても一級品だ。有名すぎるこのエッセイ、実はまだ未読だったのだが、今年のカドフェスで店頭に並べてあったのを手に取り購入した。これが、なんともウィットに富んでいて…

『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹/誰もが平凡な1人の人間である

『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹 絵・高妍 文藝春秋 2020.6.5読了 村上春樹さんの小説やエッセイには、家族のことはほとんど書かれていない。敢えて登場する人と言えば、奥さまだろう。「妻と美味しいワインと料理をたしなむ」なんていうシーン…

『志村流』志村けん/コント以上に笑顔が好きかもしれない

『志村流』志村けん 三笠書房 王様文庫 2020.5.8読了 新型コロナウイルス感染が原因で3月29日に亡くなられた志村けんさん。このニュースを聞いた時は本当に驚いた。その時は残念な気持ちになっただけで、本当にじわじわと心に重くのしかかってきたのはしばら…

『書評稼業四十年』北上次郎/本のあとがき・解説は絶対に最後に読んで

『書評稼業四十年』北上次郎 本の雑誌社 2020.3.19読了 小説をよく読む人なら、北上次郎さんの名前を目にしたことはあるだろう。特に文庫本の解説をされていることが多い。そんな北上さんの40年に及ぶ書評業について書かれた読み物だ。エッセイのようで読み…

『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』川上和人/鳥への愛が見え隠れ

『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』川上和人 新潮文庫 2020.3.10読了 本当はベストセラーになった『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』が読みたかったのだが、まだ文庫になっていないため、まずは手っ取り早い本書を手に取る。猿を始め動物好きの私は…

『なんでわざわざ中年体育』角田光代 / 自分にも出来るんだ!という達成感

『なんでわざわざ中年体育』角田光代 文春文庫 2019.10.16読了 体育っていうのがいい。運動でもスポーツでもなく、体育。まるで体操着かジャージを着て、小中学生のように活動してるみたいじゃないですか、角田さん。 30代後半を過ぎてから、運動(この本で…