書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

◇ノンフィクション

『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』渡辺一史|わがままも自己主張のうち

『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』渡辺一史 文春文庫 2021.7.17読了 この本の存在を知っている方は多いだろう。ドラマ化・映画化もされたので映像として観た方もいるだろう。2003年に刊行されたこの作品は反響を呼びノンフィ…

『謎の独立国家ソマリランド』高野秀行|知らない世界を知る楽しさ

『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』高野秀行 集英社文庫 2021.5.26読了 ずっと前から高野秀行さんの本を読んでみたくてようやく手にしたのがこの本。書店には数多くの文庫本が並んでいた。1番分厚くて躊躇したけれ…

『約束の地 大統領回顧録 Ⅰ 』バラク・オバマ|選挙戦と第1期めの任期|隠れた英雄を讃えよう

『約束の地 大統領回顧録 Ⅰ 』上下 バラク・オバマ 山田文 三宅康雄・他/訳 ★ 集英社 2021.4.24読了 発売されてすぐに購入していたのが、なんだか読むのが勿体ないような、心を落ち着けてこれに挑む準備をしてからにしよう、など思っているうちに2ヶ月くら…

『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』東浩紀|失敗力をいかす

『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』東浩紀 中公新書 2021.2.13読了 多くの方がこの本を紹介され、かつ絶賛されているため、私も気になり読んでみた。「ゲンロン」という思想誌や「ゲンロンカフェ」という企画が存在することは知っていたが何をやっている…

『アメリカン・プリズン 潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』シェーン・バウアー|民間刑務所の驚くべき実態

『アメリカン・プリズン 潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』シェーン・バウアー 満園真木/訳 東京創元社 2021.2.4読了 アメリカの人口は世界の5%であるのに、囚人数はなんと世界の25%を占めている。序章で語られたこの数字を見て驚く。確かに銃社会…

『シーラという子 虐待されたある少女の物語』トリイ・ヘイデン|人が人に与えられる素晴らしいものを胸に

『シーラという子 虐待されたある少女の物語』トリイ・ヘイデン 入江真佐子/訳 ★★ ハヤカワ文庫 2021.1.31読了 新版ということで書店に並んでいたが、過去にベストセラーになったノンフィクションだ。ネットで調べてみると、昔刊行された本のジャケットは確…

『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』河野啓/ひとりの人間としての栗城劇場

『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』河野啓 集英社 2021.1.20読了 約3年前に、ある日本人登山家がエベレストで亡くなった。そのニュースはよく憶えている。なぜなら、その登山家は指を9本失くしていたから。登山中に亡くなったことよりも、指を9本切…

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』タラ・ウェストーバー/ウェストーバー家の大きな愛を感じた

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』タラ・ウェストーバー 村井理子/訳 ★★ 早川書房 2020.12.4読了 タラさんが偉大な小説家で、読ませる作品を次々と生み出す希代のストーリーテラーなのではと勘違いしてしまうほど、おもしろい作品だった。フィク…

『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル/極限状態から見えてくるもの

『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル 池田香代子/訳 みすず書房 2020.9.19読了 アウシュヴィッツ強制収容所。その名を聞くだけで恐ろしく震えそうな気持ちになる。ナチスが捕虜になった人を大量虐殺したと言われている場所だ。この強制収容所から奇跡的…

『森の生活 ウォールデン』H.D.ソロー/自然界で生きよ

『森の生活(ウォールデン)』上下 H.D.ソロー 飯田実/訳 岩波文庫 2020.9.11読了 ウォールデンとはアメリカ・マサチューセッツ州にある湖のことである。この作品は、約170年前にヘンリー・デイヴィッド・ソローさんが2年2ヶ月に渡りウォールデン湖畔で自給…

『日本の血脈』石井妙子/女性は強し

『日本の血脈』石井妙子 文春文庫 2020.9.8読了 石井妙子さんといえば、現東京都知事小池百合子さんを描いた『女帝 小池百合子』がベストセラーになった。それも、ちょうど都知事選のさなかだったからなおのこと話題となった。本作はその石井妙子さんが過去…

『パトリックと本を読む 絶望から立ち上がるための読書会』ミシェル・クオ/誰かと一緒に本を読む

『パトリックと本を読む 絶望から立ち上がるための読書会』ミシェル・クオ 神田由布子/訳 白水社 2020.8.20読了 私は読書が大好きでもはや日常の一部となっているが、いわゆる「読書会」というものに参加したことはない。読書は自分が好きな時に、好きな本…

『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』ジェレミー・マーサー/本に囲まれて暮らす

『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』ジェレミー・マーサー 市川恵理/訳 河出文庫 2020.7.29読了 フランス・パリにある「シェイクスピア&カンパニー書店」は本好きな人の聖地である。名だたる作家たちが集い、生活してきた場所だ。とは言っても私…

『新聞記者』望月衣塑子/昨年の日本アカデミー賞原作

『新聞記者』望月衣塑子 角川新書 2020.7.11読了 昨年の日本アカデミー賞『新聞記者』の原作である。正直、私の中では絢爛豪華な海外のアカデミー賞、ヴェネツィア国際映画祭、カンヌ国際映画祭等の授賞式に比べて、それを真似た日本アカデミー賞授賞式が滑…

『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』門田隆将/あの時何が起きていたかを知る。そして真実を残す。

『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』門田隆将 角川文庫 2020.6.16読了 新型コロナウィルス感染予防対策で映画館も閉館され、当初の公開時期延期を余儀なくされた映画『フクシマフィフティ』。3月頃は映画の番宣で、佐藤浩市さんと渡辺謙さんのお姿を…

『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹/誰もが平凡な1人の人間である

『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹 絵・高妍 文藝春秋 2020.6.5読了 村上春樹さんの小説やエッセイには、家族のことはほとんど書かれていない。敢えて登場する人と言えば、奥さまだろう。「妻と美味しいワインと料理をたしなむ」なんていうシーン…

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ/無知を知ること

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ 新潮社 2020.5.28読了 このブログを見てくださっている本好きな方で、この本の存在を知らない人はいないだろう。去年のノンフィクション部門のタイトルをいくつも取り、未だ売れ続けている…

『もうダメかも 死ぬ確率の統計学』マイケル・ブラストランド/デイヴィッド・シュピーゲルハルター /数字と物語、どちらにも誠実に

『もうダメかも 死ぬ確率の統計学』マイケル・ブラストランド/デイヴィッド・シュピーゲルハルター 松井信彦/訳 みすず書房 2020.4.26読了 いつも購読しているブログで紹介されていて、この科学書なら私にも楽しめそう!と思い読んでみた。小説ばかり読ん…

『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/女性も最前線で銃を撃つ

『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり/訳 岩波現代文庫 2020.4.12読了 非常に重たい内容だった。読み終えた時に、ようやく終わったとホッとした。 途中から読み進めるのが辛くなってきたのだ。この本は、著者が500人…

『コンニャク屋漂流記』星野博美/自分のルーツを辿る

『コンニャク屋漂流記』星野博美 文春文庫 2020.3.28読了 神保町にある大好きな新刊書店に、星野博美さんの本がいくつか平積みされていた。これは何だろう?見たことも聞いたこともない著者だし、タイトルも変わっている。たまには、いつも選ばない本でも読…

『マイ・ストーリー』ミシェル・オバマ/自分のことを知り、語り、相手を受け入れれば道は開ける

『マイ・ストーリー』 ミシェル・オバマ 長尾莉紗・柴田さとみ/訳 ★★★ 集英社 2020.1.18読了 世界45言語で翻訳され、1千万部突破のベストセラー。前アメリカ合衆国大統領、バラク・オバマ氏の妻、ミシェル・オバマさんの自伝である。現在のトランプ大統領の…

『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』 ドニー・アイカー / 謎のままのほうが風化しない

『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』 ドニー・アイカー 安原和見/訳 ★ 河出書房新社 2019.2.18読了 よく訪れる書店で、大学生かもう少し上くらいの男性2人がこの本を前にして話していた。「これ、面白いらしいよ」その男性は買…