書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(は行の作家)

『コンニャク屋漂流記』星野博美/自分のルーツを辿る

『コンニャク屋漂流記』星野博美 文春文庫 2020.3.28読了 神保町にある大好きな新刊書店に、星野博美さんの本がいくつか平積みされていた。これは何だろう?見たことも聞いたこともない著者だし、タイトルも変わっている。たまには、いつも選ばない本でも読…

『手のひらの音符』藤岡陽子/心温まる希望あふれる小説

『手のひらの音符』藤岡陽子 新潮文庫 2020.3.14読了 初読みの作家さんである。タイトル、表紙、そして帯の文を見ただけで、正統派の小説なんだろうと予想できる。読み終えた今、予想に違わず良い小説だなと温かい気持ちになることが出来た。 長年働いていた…

『錨を上げよ』百田尚樹/知性を持った破天荒な作田又三の冒険

『錨を上げよ』 百田尚樹 ★ 〈一〉出航篇 〈二〉座礁篇 〈三〉漂流篇 〈四〉抜錨篇 幻冬舎文庫 2019.12.23読了 百田尚樹さんの自伝的小説が文庫本になった。百田さんおなじみの幻冬舎である。幻冬舎のイメージがあるのは、やしきたかじんさんのフィクション…

『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ / 優れた芸術作品を世に広める人たち

『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ 文藝春秋 2019.9.8読了 東京、上野にある国立西洋美術館で現在展示されている「松方コレクション」を観る前に、読んでおこうと思った。おそらく、この本も展示に合わせて発売されたのだろう。日本に、西洋の優れた…

『「カッコいい」とは何か』 平野啓一郎 / 好き、という気持ちに近いのではないか

『「カッコいい」とは何か』 平野啓一郎 講談社現代新書 2019.8.12読了 平野さんは、小説以外でこのテーマをずっと書きたくて温めていたそうだ。これを読んだ後、なんだか気軽にカッコいいという言葉を使うのが憚られるような思いになった。「カッコいい」と…

『夏の騎士』 百田尚樹 / 子供の頃にはわからない大切なこと

『夏の騎士』 百田尚樹 新潮社 2019.8.3 読了 43歳の遠藤宏志が、小学生の頃のひと夏の思い出を回想するストーリーである。読み心地は、さすが百田さん、抜群に良い。誰もが読みやすく、誰もが読了後には爽快な気持ちになると思う。 特に男の子であればほと…

『旅をする木』 星野道夫 / 人生をどうよく生きるか

『旅をする木』 星野道夫 文春文庫 2019.6.21読了 大型書店に行くと、たいてい文春文庫の平置き棚の前にベストセラーとして積み上げてある。だから、この本の存在は随分前から知っていて、いつか読みたいとは思っていた。しかし、紀行文・短編であるためか、…

『呪文』 星野智幸 / 今風の小説は今しか理解できないだろう

『呪文』 星野智幸 河出文庫 2019.2.20読了 今日も初読みの方の本。星野智幸さんの作品は、『俺俺』という小説が単行本で並んでいる時から興味を持っていた。タイトルからして、当時よくニュースになっていたオレオレ詐偽の話だなと思っていたのもあるが、表…

『考える葦』 平野啓一郎 / 人間は考えるために生きる

『考える葦』 平野啓一郎 キノブックス 2019.2.7読了 小説以外で平野さんの本を読むのは始めてである。平野さんの文章は読む度に圧巻で、これほどまでに文才があり、これほど豊富な語彙や表現力がある人が現代にいるのかと常々思っており、大好きな小説家の1…

「ベルリンは晴れているか」 深緑野分

「ベルリンは晴れているか」 深緑野分 筑摩書房 2019.1.7読了 1940年代のドイツ、ベルリン、主人公アウグステの数日間の物語。戦争が終わった後をひたむきに生きる人達。幕間がいくつか挟まれており、少女時代のエピソードが挿入されている。 少し前から新聞…