書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

海外(サ行の作家)

『ならずものがやってくる』ジェニファー・イーガン|ポップな現代アメリカ文学

『ならずものがやってくる』ジェニファー・イーガン 谷崎由依/訳 ハヤカワepi文庫 2021.3.30読了 2011年のピューリッツァー賞フィクション部門受賞作である。「ならずもの」とは何なのか?全く予想がつかず、一体どんな話なんだろう?と興味津々で読み進め…

『ロード・ジム』ジョセフ・コンラッド|マーロウの語りからジムを想像する

『ロード・ジム』ジョセフ・コンラッド 柴田元幸/訳 河出文庫 2021.3.20読了 ジムという1人の人間のことを、マーロウの視点で描いた壮大なる物語。マーロウといえば、チャンドラー作品に出てくる探偵フィリップ・マーロウが思い浮かぶけれど、ここではチャ…

『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』ジェフリー・ユージェニデス|少女たちのほのめかし

『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』ジェフリー・ユージェニデス 佐々田雅子/訳 ハヤカワepi文庫 2021.2.22読了 このタイトルにまず目を見張る。なんといっても「ヘビトンボ」だ。トンボの一種で、大顎で噛みつく習性を蛇にとらえてヘビトンボと名付け…

『マーティン・イーデン』ジャック・ロンドン|富と名声で他人を判断する

『マーティン・イーデン』ジャック・ロンドン 辻井栄滋/訳 白水社 2021.2.20読了 ジャック・ロンドン氏の作品で最も有名なのは『野性(荒野)の呼び声』だろう。私も去年読み、大自然の雄大さと生きるエネルギーを堪能した。この『マーティン・イーデン』は…

『アメリカン・プリズン 潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』シェーン・バウアー|民間刑務所の驚くべき実態

『アメリカン・プリズン 潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』シェーン・バウアー 満園真木/訳 東京創元社 2021.2.4読了 アメリカの人口は世界の5%であるのに、囚人数はなんと世界の25%を占めている。序章で語られたこの数字を見て驚く。確かに銃社会…

『一九八四年』ジョージ・オーウェル|洗脳政治とはこのこと

『一九八四年』ジョージ・オーウェル 高橋和久/訳 ★ ハヤカワepi文庫 2021.1.26読了 この小説、読んだ人も多いと思うが、読んでいなくても存在自体はほとんどの人が知っているのではないだろうか。書店に行けばハヤカワ文庫の棚に平積みされているし、紙の…

『コレクションズ』ジョナサン・フランゼン/ある家族のありのままを曝け出す

『コレクションズ』上下 ジョナサン・フランゼン 黒原敏行/訳 ハヤカワepi文庫 2021.1.23読了 現代アメリカにおける国民的作家の1人、ジョナサン・フランゼンさんについに手を伸ばしてしまった。『ピュリティ』や『フリーダム』が気になっていたのだが、分…

『ナイン・ストーリーズ』サリンジャー/読みたくなる類いの爽快な作品たち

『ナイン・ストーリーズ』J.D.サリンジャー 柴田元幸/訳 ヴィレッジブックス 2021.1.14読了 サリンジャーさんの作品は、どこか爽快なイメージがある。例えその小説が悲劇だとしても。読んだ作品の数はそう多くないのに、ふと思い出した時に読みたくなる類…

『アウグストゥス』ジョン・ウィリアムズ/ローマ帝国はいかにして生まれたのか

『アウグストゥス』ジョン・ウィリアムズ 布施由紀子/訳 作品社 2021.1.9読了 ローマの古代史、紀元前1年にローマ帝国が地中海世界を支配した時代を描いた作品である。その後は平和な200年と言われる「パックス・ロマーナ」になる。私は結構な年齢になるま…

『集英社ギャラリー[世界の文学]18 アメリカⅢ』ベロー、ボールドウィン、バース/アメリカ文学お腹いっぱい

『集英社ギャラリー[世界の文学]18 アメリカⅢ』ベロー、ボールドウィン、バース 集英社 2021.1.2読了 集英社が1989年から刊行した世界文学全集全20巻のうちの1冊、通し番号としては18でアメリカの3巻めである。巻末の紹介では「病める現代アメリカをえ…

『マーティン・ドレスラーの夢』スティーヴン・ミルハウザー/夢を追い続ける人は満足することがない

「マーティン・ドレスラーの夢』スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸/訳 ★ 白水Uブックス 2020.11.23読了 今年の夏にスティーヴン・ミルハウザーさんの『エドウィン・マルハウス』を読んで、その独特な世界観に圧倒された。次は柴田元幸さん訳の作品を読も…

『ファインダーズ・キーパーズ』スティーヴン・キング/小説を愛しすぎた故に

『ファインダーズ・キーパーズ』上下 スティーヴン・キング 白石朗/訳 ★ 文春文庫 2020.10.8読了 ちょうどひと月ほど前に読んだ『ミスター・メルセデス』の続き、ホッジズ刑事シリーズの2作目である。前作が面白かったからすぐに買っておきスタンバイしてい…

『ミスター・メルセデス』スティーヴン・キング/警察もの推理ミステリー

『ミスター・メルセデス』上下 スティーヴン・キング 白石朗/訳 ★ 文春文庫 2020.9.2読了 久しぶりのキング作品だ。キング氏の小説を読むときは、軽い気持ちで読めないから心して挑む。この作品はのちに続く『ファインダーズ・ キーパーズ 』『任務の終り』…

『真夜中の子供たち』サルマン・ラシュディ/幻想的な中に卑猥さがつきまとう

『真夜中の子供たち』上下 サルマン・ラシュディ 寺門泰彦/訳 岩波文庫 2020.8.15読了 元々早川書房から単行本として刊行されていたが、このたび岩波文庫より装い新たに刊行された。ブッカー賞を受賞し『百年の孤独』以来の衝撃と称されたこの作品、読まな…

『フラニーとズーイ』サリンジャー/家族の慰め方

『フラニーとズーイ』D.J.サリンジャー 村上春樹/訳 新潮文庫 2020.8.12読了 この作品、まだ未読だった。サリンジャー作品は『ライ麦畑でつかまえて』しか読んだことがない。タイトルと中身のギャップがこんなにもある作品は『ライ麦〜』の右に出るものはな…

『エドウィン・マルハウス』スティーヴン・ミルハウザー/子供による子供の伝記

『エドウィン・マルハウス』スティーヴン・ミルハウザー 岸本佐知子/訳 河出文庫 2020.8.4読了 柴田元幸さんはおそらく文学界の中では一番有名な翻訳家であり、イコールポール・オースターさんの作品、というイメージの方も多いだろう。他に、柴田さんが影…

『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』ジェレミー・マーサー/本に囲まれて暮らす

『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』ジェレミー・マーサー 市川恵理/訳 河出文庫 2020.7.29読了 フランス・パリにある「シェイクスピア&カンパニー書店」は本好きな人の聖地である。名だたる作家たちが集い、生活してきた場所だ。とは言っても私…

『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』ジェスミン・ウォード/弱さをひた隠し強がる

『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』ジェスミン・ウォード 石川由美子/訳 作品社 2020.6.18読了 いや、この小説のタイトルやばいですよね。カッコよすぎ!英語の原文だとどんなニュアンスなのかはわからないけど、日本語訳のこの表現は素晴らしい。この作品は…

『荒野の呼び声』ジャック・ロンドン/野性にもどる

『荒野の呼び声』ジャック・ロンドン 海保眞夫/訳 岩波文庫 2020.6.9読了 ハリソン・フォードさん主演で映画化された『野性の呼び声』の原作である。ジャック・ロンドン氏といえば動物を題材にした本を書く人、というイメージだ。彼の作品を読むのは初めて…

『ずっとお城で暮らしてる』シャーリイ・ジャクスン/つきまとう不快感

『ずっとお城で暮らしてる』シャーリイ・ジャクスン 市田泉/訳 創元推理文庫 2020.5.30読了 シャーリイ・ジャクスンさんの本は実はまだ読んだことがなくて、中でもこの小説のことはずっと気になっていた。色々と書評にあがることも多いけど、何よりもこの表…

『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/女性も最前線で銃を撃つ

『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり/訳 岩波現代文庫 2020.4.12読了 非常に重たい内容だった。読み終えた時に、ようやく終わったとホッとした。 途中から読み進めるのが辛くなってきたのだ。この本は、著者が500人…

『荊の城』サラ・ウォーターズ/騙し騙されて

『荊(いばら)の城』上下 サラ・ウォーターズ 中村有希/訳 創元推理文庫 2020.3.31 読み始めたらすぐにディケンズの『オリヴァー・ツイスト』が出て来た。つい先日読んだばかりだから、盗賊ビル・サイクスの名前も覚えていた。そう、この『荊の城』は、イ…

『ホビットの冒険』J.R.R.トールキン / ホビットとドワーフと一緒にファンタジーの世界に

『ホビットの冒険』J.R.R.トールキン 瀬田貞二/訳 岩波書店 2019.10.12読了 ハリーポッターシリーズはほとんど読んだけど、ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)シリーズは映画を少し観ただけで、原作は読んだことがなかった。『指輪物語』の前日譚とし…

『IT』スティーヴン・キング / 自分の「IT」をどうやって乗り越えるか

『IT』1~4 スティーヴン・キング 小尾芙佐/訳 ★ 文春文庫 2019.9.3読了 ずっと前から気になっていた作品である。1990年の映画も、ホラー映画史上最大のヒット作と言われている2017年のリメイク映画も、実は観ていない。怖いピエロ(ペニーワイズ)の画…

『星を継ぐもの』 ジェイムズ・P・ホーガン / 理系の本も読もう

『星を継ぐもの』 ジェイムズ・P・ホーガン 池 央耿 /訳 創元SF文庫 2019.3.5読了 普段だったらあまり手に取らない分野の小説だが、創元SF文庫で100冊突破!というロングセラーだったので気になり読んでみた。昔、立花隆さんの『宇宙からの帰還』を読…

『ドン・キホーテ』 セルバンテス / 岩波書店を応援しています

『ドン・キホーテ』前篇(一)(二)(三)後篇(一)(二)(三) セルバンテス 牛島信明/訳 岩波文庫 2019.2.16読了 セルバンテスといえばドン・キホーテだが、ドン・キホーテといえば、青いペンギンがキャラクターの、激安の殿堂を思い浮かべる人が多いかもしれない…