書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

海外(ラ行の作家)

『ピクニック・アット・ハンギングロック』ジョーン・リンジー|絶えずぞくぞく、ざわざわ

『ピクニック・アット・ハンギングロック』ジョーン・リンジー 井上里/訳 創元推理文庫 2021.12.7読了 終始不穏な空気をまとっている作品だった。この先何が起こるのかわからないぞくぞくした緊迫感で、小説としてとてもおもしろく読めた。いわゆるミステリ…

『都会と犬ども』マリオ・バルガス=リョサ|塀のなかでの人間関係

『都会と犬ども』マリオ・バルガス=リョサ 杉山晃/訳 新潮社 2021.11.15読了 ペルー・リマにある軍人士官学校を舞台とした、寄宿舎に住む10代の少年たちの群像劇である。これがリョサさん初の長編小説で、しかも20代に書かれたものであることが信じがたい。…

『ソラリス』スタニスワフ・レム|3つの問題意識を読み解けるか

『ソラリス』スタニスワフ・レム 沼野充義/訳 ハヤカワ文庫 2021.10.6読了 今年はポーランドの作家スタニスワフ・レムの生誕100年になるという。先月、国書刊行会から『インヴィンシブル 』が新訳で単行本として刊行され、かなり売れているというから、日本…

『ドルジェル伯の舞踏会』ラディゲ|読み終えて余韻をしみじみと

『ドルジェル伯の舞踏会』レーモン・ラディゲ 渋谷豊/訳 光文社古典新訳文庫 2021.8.2読了 人はどんなふうにして自分が誰かを愛していると気付くのだろう。フランソワの内に愛が宿った瞬間の描写を読んだときにふと思った。そしてドルジェル伯夫人・マオの…

『悪い娘の悪戯』マリオ・バルガス=リョサ|濃いハチミツ色の瞳に翻弄される

『悪い娘(こ)の悪戯』マリオ・バルガス=リョサ 八重樫克彦・八重樫由貴子/訳 ★★ 作品社 2021.7.21読了 ペルー人のリカルドは、一生をかけて1人の女性を愛した。たとえ彼女が魔性の女だとしても。こんなに翻弄されなくても!言いなりにならなくても!また…

『奥のほそ道』リチャード・フラナガン|戦争の英雄と言われても

『奥のほそ道』リチャード・フラナガン 渡辺佐智江/訳 白水社 2021.4.13読了 私は旅行でタイに2回訪れたことがある。2回めに行った時、バンコクの郊外・カンチャナブリのオプショナルツアーに参加した。このツアーは、映画『戦場に架ける橋』の舞台となった…

『高い窓』レイモンド・チャンドラー|マーロウがいちいちカッコ良すぎる

『高い窓』レイモンド・チャンドラー 村上春樹/訳 ハヤカワ文庫 2021.3.23読了 先月読んだ『ロング・グッドバイ』が素晴らしく良かったから、余韻冷めやらぬうちに、探偵フィリップ・マーロウシリーズの3作めである『高い窓』を読んだ。今回も村上春樹さん…

『ロング・グッドバイ』レイモンド・チャンドラー|孤高の私立探偵マーロウ|ハードボイルドであり文学的傑作

『ロング・グッドバイ』レイモンド・チャンドラー 村上春樹/訳 ★ ハヤカワ文庫 2021.2.26読了 これは素晴らしい。とんでもない名作だ。最初の数頁を読んだだけで文体に引き込まれる。探偵が登場するハードボイルド小説、という枠組みを超えて、世界で最も秀…

『夏への扉』ロバート・A・ハインライン/冷凍睡眠で生き長らえる未来

『夏への扉』ロバート・A・ハインライン 福島正実/訳 ハヤカワ文庫 2020.9.23読了 SF古典小説の名作としてよく取り上げられているため、この作品の存在は知っていたがまだ未読だった。なんでも、日本で山崎賢人さん主演でもうすぐ映画が公開されるようで、…

『愛のゆくえ』リチャード・ブローティガン/不思議な図書館とそこで始まった愛

『愛のゆくえ』リチャード・ブローティガン 青木日出夫/訳 ハヤカワepi文庫 2020.4.11読了 村上春樹さんが多大なる影響を受けたというリチャード・ブローティガン氏。私は彼の本をまだ読んだことがなかったのだが、1番読みやすそうな本作をまずは選んでみた…

『三体』 劉 慈欣 / 中国北京発 いま一番売れているSF小説らしい

『三体』 劉 慈欣(りゅう・じきん) 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ / 訳 早川書房 2019.8.17読了 今どこの書店に行っても、必ず積み上げられているであろう単行本。SF小説はそんなに好きなわけでもないのだが、あまりにも話題になっているため気になって…