書に耽る猿たち

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『雪の練習生』 多和田葉子 / 外も寒い、読んでいても寒い

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『雪の練習生』 多和田葉子

新潮文庫  2019.2.9読了

 

後まで不思議な小説であった。まず、ホッキョクグマが主人公であることもそうだが、あたかも人間のように振舞っている。そして周りも何ともなしに対応する。クマの三世代が自伝で紡ぐ連作小説。大事なことが書かれているような気がするが、私の読解力では読み取れず、そして私の表現力では言葉に出来ず、ただふわふわとした感覚で終わった。そんな読み方も間違いではないだろう。

にする前は、何となく小川 洋子さんの雰囲気に近いのかな?と思っていたが、全然違った。不思議な感覚が漂うといえば多和田さんの方が上である。『献灯使』という小説で全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞したようだ。英語のままのほうが綺麗な文章になるんだろうなと思わせる。訳した文章ですら、翻訳物のようだ。

ッキョクグマが主人公で、タイトルも"雪の"とあり、そしてここ数日の寒冷前線が通過したことによる雪の影響もあるだろう、読んでいる間はずっとひんやりと寒かった。今もまた、窓の外にはちらちらと雪が舞っている。しかし、寒いと神経が研ぎ澄まされ、考えることにおいては最適な環境になると思う。もちろん、のんびりバカンスを楽しむのであれば、暖かい国は最高なのだが。