書に耽る猿たち

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『ドン・キホーテ』 セルバンテス / 岩波書店を応援しています

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ドン・キホーテ』前篇(一)(二)(三)後篇(一)(二)(三)  セルバンテス  牛島信明/訳

岩波文庫  2019.2.16読了

ルバンテスといえばドン・キホーテだが、ドン・キホーテといえば、青いペンギンがキャラクターの、激安の殿堂を思い浮かべる人が多いかもしれない。それほど、あの量販店は凄まじい勢いで国内において知名度を上げ、ドンキの名で親しまれている。そもそも、何故店名を「ドン・キホーテ」にしたのだろうか?もちろんこの小説から取ったようだ。「彼は、行動理想主義者。既成の常識や権威に屈しないその姿のように、新たな流通事業を創造したい」という会社の願いをのせて命名されたそう。ちなみに、「ドン・キホーテホールディングス」という社名、この2月から「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」に社名変更したらしい。環太平洋地域。より世界に広く事業を展開させるためだろうが、個人的には旧社名のほうがいいのではと思う。

ン・キホーテ。古典名作であり、本好きなら読まないといけない!(と勝手に思っている)シリーズの一つでもある。いつかは絶対に読むだろうという、読まなくては死ねないなくらいの小説。それにしても、こんな内容だとはつゆほども思わなかった。何となく、ナポレオンのような人が出てきて次々と悪い奴をやっつけたり、国を統治したり繁栄させたりというイメージだったのだが、まさか喜劇だったとは。あとは「ラ・マンチャの男」なる映画だか舞台だかも、このドン・キホーテの話だったとは恥ずかしながら今知った。それだけ、ドン・キホーテは、名前だけは有名だけれど、全巻通して読んだ人は少ないのだと思う。

士道物語を読みすぎたあまり、ドン・キホーテ自らが騎士になってしまう、そして見るもの全て過去読んだ騎士道物語のシーンを回想したりと、ある意味狂った話。そして従士として登場するおちゃめなサンチョ・パンサ。見た目も中身も対局をなすこの2人の会話がほほえましい。滑稽な場面が多いのだが、時に諭すドン・キホーテの言葉は人間の根底を捉えている。知性・信念が溢れ出ており、小説を読み終わる頃には、彼を偉大な人物のように感じてしまう自分がいる。

第五十章 ここでは老女を打擲したうえ、ドン・キホーテをつねり、ひっかいた、魔法使いたる刑の執行人が実は誰であったかが明かされ、加えてサンチョ・パンサの妻、テレサ・サンチャのもとへ手紙を持参した小姓の見に起こったことが語られる

これは目次の一つなのだが、既に“要約”、“ネタバレ”になっている。現代小説の目次は、単語一語のこともあるし長くても一行で収まる。英数字だけのものも多い。昔はこんな風なのが主流だったんだろうか。あ、でも村上春樹さんの場合は結構長めかもしれない。

 ぁ、17世紀の小説なので予想通り読みやすいということはない。ディケンズの『荒涼館』、ユーゴーの『レ・ミゼラブル』、デュマの『モンテ・クリスト伯』を読んだ感覚に近い。それでも古典の名作が今もなお残っていてそしてこれからも読まれ続けることは素晴らしい。現在生み出されている小説で100年以上残るものはあるのだろうかと訝しい。それにしてもこういった古典は大体岩波文庫から出版されている。岩波書店、これからも復刻作品を頼みます!出版業界不況だけれども、求められているし得意分野を活かして頑張っていただきたい。特に安くなるわけでもなくお得感は感じないし、箱も重要ではないけれど、この美装ケースも続けて欲しいところ。 

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