書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『改訂完全版 占星術殺人事件』 島田荘司 / 改訂いりますか?そして探偵ものは再読には向かない

f:id:honzaru:20190603004725j:image

『改訂完全版 占星術殺人事件島田荘司

講談社文庫  2019.6.6読了

 

分が好きそうな本を選んで欲しいと言われて、何冊か人に選んだ本の中の一冊である。どうやら、あまり気に入らなかったのか読む気配がない。たいてい人に本を勧める時は、その人がよく読んでいるタイプの作品を選ぶか、自分が読んだことのある本の中から、この人に合いそうかなと思ったものを選ぶ。高い確率で読んで納得してもらえることが多い。

りあえず、そのまま積読も勿体ないので再読することにした。読んだのは15年位前だろうか。読んだ時の衝撃は計り知れず、トリックは覚えていたのだが、登場人物や犯行動機などはすっかり忘れてしまっていた。そして改訂完全版とあるように、諸々手を加えられているのだろう、印象深かった挿入図(トリックの説明)が変わっていた。むしろわかりやすくなっているとは思うのだが、以前、ひとつの絵として脳に記憶されてあったものとは変わってしまっていた。改訂版、、まぁわかるのだけれど、その作者の、その時点での表現方法として残す方が私は好きである。その年齢だからこそのみずみずしいまでの筆力、その未熟な経験値からくる作者の想いがあってひとつの作品になると思うから。完璧に整える必要はない!

想を綴るにはあまりにも有名過ぎる作品なので、敢えて言うこともない。過去に読んだ時は確かにはまった。"御手洗潔探偵シリーズ"を読み漁り、数冊"吉敷竹史シリーズ"を読み、そして同じ新本格派、綾辻行人さんの"館シリーズ"を一時期は読み耽った。おそらく、読書好きな人は一度は通る道筋であろう。

かし、いわゆる犯人やトリックを暴く探偵ものは、あまり再読するものではない。中には新たな発見もあると思うが、最初の感動が薄れる。もちろん、作品そのものから漂う空気、美しい文章を堪能できる優れた作品もあるが、そうなると探偵ものではなくなる気がする。

んでいる間、御手洗潔と榎木津礼次郎が重なり、京極夏彦さんの"京極堂シリーズ"を読みたくなった。このシリーズはどちらかというと、トリックを暴くことよりも、豊富な知識やウンチク、回りくどいほどの屁理屈を楽しむ作品であろう。