書に耽る猿たち

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『「カッコいい」とは何か』 平野啓一郎 / 好き、という気持ちに近いのではないか

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『「カッコいい」とは何か』 平野啓一郎

講談社現代新書  2019.8.12読了

 

野さんは、小説以外でこのテーマをずっと書きたくて温めていたそうだ。これを読んだ後、なんだか気軽にカッコいいという言葉を使うのが憚られるような思いになった。「カッコいい」という言葉には、表面的(見た目)なカッコよさと、本質的なカッコよさの両方の意味合いがあり、みんな知らず知らずのうちに使い分けており、かつ聞く側も使い分けて聞いているように思う。

分はどんな時にその言葉を使うだろう?スポーツ観戦が好きなため、スポーツ選手に向けてその言葉を使うことが多い気がする。子供の頃は、テレビに出てくるアイドル、俳優、バンドを見て、その表面的な部分を見ていたことが多いが、歳をとるにつれ、どちらかというと本質的な部分を見るようになってきている。スポーツ選手で言えば、そのプレースタイル、その競技への考え方など。世に知られている人だけでなく、身近にいる尊敬する人もそうだろう。カッコいいとは、憧れであり尊敬である。だから、平野さんの言うように、いかに生きるべきかを考えることに通じるような気がするし、とても共感できた。

「カッコいい」という言葉がいつから生まれたのか、どのように使われているのか、色々な資料と共に平野さん独自の考えが展開されていく。「カッコいい」の反対が「ダサい」であるとは、言い得て妙である。なるほど、カッコ良くなくてもいいが、ダサいと思われるのはみんなめちゃめちゃ嫌だろう。

「カッコいい」というのは「好き」という気持ちに近く、主観的な部分が多いのではないだろうか?だから、あえて論じられることもなく日常的に使われているのだと思う。そんな言葉を掘り下げて掘り下げて、一冊の新書にまとめあげるなんてさすが平野さんだ。それにしても、新書を読んだ後の読後感って、どうしてこうもいつも同じなのだろう。私だけなのかもしれないが、小説みたいに感動したことがない。新書、教養書を読んだ後に、ぞくぞくした!楽しかった!シビれた!という感覚になるような人を私はカッコよく思う。

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