『三体』 劉 慈欣(りゅう・じきん) 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ / 訳
早川書房 2019.8.17読了
今どこの書店に行っても、必ず積み上げられているであろう単行本。SF小説はそんなに好きなわけでもないのだが、あまりにも話題になっているため気になって購入してみた。
なるほど、、まさしく早川書房が出すような小説だった。今はまだ単行本だが、数年後にハヤカワ文庫として、コーナーに売り出される光景の方が眼に浮かぶ。読んだ結果、あまり私の好みではなかったのだが、おそらく、SF、ミステリ、物理、ゲームが好きな人なら楽しめると思う。特にハヤカワ大好き!な人には。しかし、このストーリーを考え出す筆者の頭の中はどうなっているのだろう!?とあっぱれ、である。
そもそも、三体の意味を知らなかった私にとっては、予備知識がなさすぎた。天体力学の「三体問題」に由来するらしい。三つの天体がたがいに万有引力を及ぼし合いながらどのように運動するかという問題で、一般的には解けないということが証明されている(P435 訳者あとがき より)。作中での「三体」はバーチャルリアルティのゲーム内のことだったとは。時空と空想を超えたエンターテイメント作品で、このジャンルが好きな人にはたまらないのだと思う。
ところで、この小説を読もうとしたきっかけの一つが、作品の舞台が中国、北京だったからである。先月の初めに、北京旅行に行ってきたのだ。北京に行くと話しても、周りはなんとなく良い顔はしないのだが、万里の長城をひと目見たくて旅立った。なるほど、皆が思う中国(中国人)のイメージは多少あった(え!?と疑ってしまう国民性を見てしまったり…)のだが、思ってたほど悪くはなく、北京オリンピック以降は整備もされたのか、北京自体の街は比較的綺麗に感じた。万里の長城も、天安門広場も、天壇公園も、どこも混雑でそして雄大、さすが世界最大の人口規模を誇る、人間のエネルギーを感じた。これだけ多くの国民がいれば、様々な人間がいるのは間違いない。才能も眠っているだろう。この国、この街から『三体』が生まれたのか、と読んで感慨深くなった。