書に耽る猿たち

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『紙の動物園』ケン・リュウ / 柔らかく優しいSF作品集

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『紙の動物園』 ケン・リュウ   古沢嘉通/編・訳

ハヤカワ文庫  2019.11.3読了

 

吉直樹さんだけでなく、多くの人がお薦めしているこの作品、前から気になっていたけれど、短編だしな〜、SFだしな〜、と今まで読みあぐねていた。のだが、ついに。

の文庫本には、単行本の中から選んだ7編の短編が収録されている。表題作『紙の動物園』は、確かに、読み終わった後に静かな感動がある。少し涙腺が緩みそうになる。短い作品ではあるが、人権と差別について考えさせられる。そして、子を想う母親の気持ちが痛いほど伝わってくる。しかしそれが息子に伝わった頃にはもう母親は存在していない。息子がはたしてどのように感じたかは小説では触れられていない。今、主人公の気持ちが読者に委ねられる作品が多い気がする。

の作品は、SF・ファンタジーに溢れている。いや、柔らかいSF、もしくは優しいSFと表現したらいいだろうか。表題作の『紙の動物園』だけは文学作品のような感じで、私の中では抜きん出て良かった。他に選ぶとしたら、リリーと文字占い師甘(かん)さんとの心温まる物語、『文字占い師』はまぁまぁ良かった。中国人は漢字をとても大切にしている。その意味に敬意をはらっている。日本人も、もっと漢字を大切にするべきだと思った。

の5作品は、正直私には難解であまり理解出来なかった。これだけ多くの人から評価をされてる作品集なのに、私にはあまり合わなかったようだ。SFを読んで面白い!と思えるようになりたいものだ。。読み続けていれば、良さがわかるようになるのかな?

ン・リュウさんは、中国系アメリカ人。文筆業だけではなく、弁護士、コンピュータプログラマーの資格もあるらしい。相当なエリートだ。中国系の小説家は何でも出来る天才肌の人が多い印象だ。