書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン/自然界の猛威に立ち向かう男たち

f:id:honzaru:20200209134318j:image

女王陛下のユリシーズ号アリステア・マクリーン  村上博基/訳

ハヤカワ文庫  2020.2.9読了

 

洋冒険小説として世界一有名な小説は、メルヴィルの『白鯨』だろう。読んだのは4〜5年前だろうか。世界の十大小説の一つだし読んでおくかという単純な動機だった。白鯨モディ・ビックに立ち向かうエイハブ船長の勇気に賞賛を感じたが、なにぶん小説(訳だろうか)の古さは否めなかった。

作はスコットランドでマクリーンが1955年に発表し、大きな反響を及ぼした。日本では1960年代に刊行され、海洋冒険小説として絶大な地位を固めたようだ。連合軍輸送船の護送にあたる英国巡洋艦ユリシーズ号と、そこに乗り込む船員(男たち)を巡る、過酷な自然との戦いが描かれている。

然界の恐ろしさと戦況での彼らの想いが、スピード感を持って描写されている。戦場での戦いだからか、息つく暇もなく、そして切迫した状況が文章からも伝わってきた。ユリシーズ号に乗る男たちの生き生きと人間らしく振る舞う様が非常に印象的だ。ヴァレリー艦長を筆頭にして、ニコルス軍医やカーペンター航海長など魅力的な人物が体当たりで小説を面白くさせている。

の作品では、最後に一人だけ女性が登場する。航海を終えたニコルスと話す女性。それまでは男性しか登場しない。まさに、海は男社会なのだとまざまざと感じさせられた。あ、いや、ユリシーズ号の説明の際に、船のことを「彼女」と呼んでいた。船は女性称なのだろうか。とりあえず、この小説はおそらく男性の方が夢中になれると思う。

て、ユリシーズといえば、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』を思い出させる。プルーストの『失われた時を求めて』と並び20世紀最大の長編小説と言われている。まだ私はどちらも読んでいない。両作品ともなんとなくだけど、ストーリーは単調そうで読み進めるのが少ししんどそうな予感、、それに伴い大長編だからまだ手が出ないのが現状。いつかは読まないとな…。

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村