書に耽る猿たち

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『志村流』志村けん/コント以上に笑顔が好きかもしれない

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『志村流』志村けん

三笠書房 王様文庫  2020.5.8読了

 

コロナウイルス感染が原因で3月29日に亡くなられた志村けんさん。このニュースを聞いた時は本当に驚いた。その時は残念な気持ちになっただけで、本当にじわじわと心に重くのしかかってきたのはしばらく経ってからだ。老若男女問わず志村さんのファンは多いはずだから、日本中のほとんどの人がこんなふうに志村さんを悼む。

々2002年にマガジンハウスから刊行されていた『志村流』がこの度三笠書房から文庫で発売となった。志村さんの考え方を知りたいなと、手に取る。変なおじさんやひとみばあさんの姿を思い出しながら。

一生を一日で考えてみると、42歳=午後2時を過ぎたら、後は陽がだんだん傾き、陰って、やがて夜になっていく。もし、午後2時を過ぎている人たちが(中略)新たなことに挑戦しようと密かに考えているとしたら、もう一度昇りつめてきたこれまでの時間と、沈みゆくこれからの時間というものを思い起こしてみたらどうだろう。(23頁)

るほど、こうして考えると1日1日を大事にしようと思える。そして、私ももうすぐ午後2時を過ぎるんだなぁと思うと、これからの生き方を見つめ直そうかと考えるきっかけにもなる。

芸能界って、昔から大物は遅く来るのが当たり前みたいなところがある。でも、それってかなり常識とズレていると思うよ。一流企業になればなるほど、会社のトップって社員の誰よりも早く出社するって聞くけどなぁ。(137頁)

村さんは「個性は変人、常識は凡人」でいたいと考えている。常識なくしては成功しないからだ。先日追悼番組を観て、志村さんは年下でも誰であっても、相手には絶対に敬語を使うそうだ。大御所なのに普通に(むしろ相手を敬うように)ふるまうこと、それがいかに大事なことかを知っている。

かりやすく親しみのある言葉で、志村さんならではの流儀が散りばめられている。生き方のヒントは、いたってシンプル。小学校低学年で習うようなことを当たり前に行って、少しの個性を磨くこと。そして行き詰まったら初心に帰ることが大切だと。

はドリフ世代ではなく『志村けんのだいじょうぶだぁ』や『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』をよく見ていた。子供だったから「加トちゃん」の「加」が漢字表記であることにしばらく気付かず、「カロトちゃん」って勝手に読んでた気がする。ごきげんテレビの「おもしろビデオコーナー」大好きだったなぁ。女性だから、バカ殿は実はそんなに好きでなかった笑。最近では『志村どうぶつ園』のパンくん(大好きなチンパン!)との微笑ましいやり取りが大好きだった。

村さんって本当に嬉しそうに楽しそうに笑う、私はそれが好きなんです。コント以上に好きかもしれない。芸能人って作り笑いとか演技になっているのがどうしてもわかってしまう。志村さんが笑う時はそういう表裏がなくて、心から笑っている、それが伝わるからみんなも笑顔になると思うのだ。