書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『緋色の研究』アーサー・コナン・ドイル/ホームズとワトスンの出会い

f:id:honzaru:20200606205431j:image

『緋色の研究』アーサー・コナン・ドイル 日暮雅通/訳

光文社文庫 2020.6.7読了

 

していた光文社文庫の新訳シャーロック・ホームズ、つい先日たまたま書店で見つけた。ネットで買えなくても、リアル書店で見つかることはよくある。この『緋色の研究』を選んだのは、時系列的にはこれが一番最初、ホームズとワトスンがどのように出会ったのかが書かれているからだ。実は2人がどうやってコンビになったのか知らなかった。

きく2つの章に分かれている。第1章は、ホームズとワトスンの出会いから、ある殺人事件の解決に向けたホームズの推理が展開される。第2章は、うってかわって犯人の視線による独白。こういった組み立て方は当時はかなり斬新だったのではないだろうか。いつもの鮮やかでスマートな短編の推理とは一味違う。

件と直接関わるネタバレではないから大丈夫だと思うけど(タイトルの意味をネタばらします)、緋色の研究とは、殺人の研究、習作らしい。ホームズの言葉によるとこういうことだ。

人生という無色の糸の束には、殺人という緋色の糸が一本混じっている。ぼくらの仕事は、その糸の束を解きほぐし、緋色の糸を引き抜いて、端から端までを明るみにだすことなんだ。(72頁)

トスンと出会ってから最初の事件。ここから、ホームズとワトスンの黄金コンビによる数々の事件が幕開けし、ワトスンが事件簿として綴っていく。その第一話である序章としてこのタイトルになっているのだ。

色とは血の色のことと思いきや、そんな単純な意味ではなかったのである。これを知っただけでも、この小説を読んだ甲斐があった!赤川次郎さんが解説にも書いているが、事件解決の合理性からみれば、ホームズ作品には穴がある。しかし、この名コンビを世界中に知らしめて、独特の世界観を作り上げたことは本当に素晴らしい。

とんどの人が『シャーロック・ホームズの冒険』という短編集から入るのではないだろうか。私もそうだ。『〜の冒険』には有名な『赤毛連合』や『まだらの紐』などが収録されているし、何故かこれが多くの出版社のシリーズの中で一作めになっているからだ。

ームズとワトスンの出会いを知る(この『緋色の研究』を読んだことがある)人は実は少ないのではないか。私はこれを読んで良かったと心から思う。そうそう、この光文社文庫の新訳はとても読みやすかった。さて、シリーズの残り3つの長編ものんびり読んでみるか。

honzaru.hatenablog.com