書に耽る猿たち

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『太陽と鉄・私の遍歴時代』三島由紀夫/肉体と精神・三島たらしめるもの

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『太陽と鉄・私の遍歴時代』三島由紀夫

中公文庫 2020.8.22読了

 

島由紀夫さんの自伝的エッセイが2篇と、自衛隊駐屯地で自決する少し前のインタビューが収録されている。まぁ、2篇の極端なことったらない。なるべく我慢して巻末の解説は最後に読もうとしているのに、今回ばかりは失敗。なんと『私の遍歴時代』から読むことをおすすめする、とあったのだ。まったく、こんな解説を入れるなら、順番を考えて欲しいものだ。

れほど『太陽と鉄』は難解だった。私が読んだ三島さんの作品の中で1番やっかいだったかもしれない。知っての通り三島さんはある時から肉体改造を始めた。子供の時分から虚弱体質で線の細い彼は、長年コンプレックスを感じていたのだ。三島さんはこの作品で「太陽」を日光浴、「鉄」をバーベルに見立てている。肉体と精神について、抽象的に書かれているのだが、どのようにして「三島由紀夫」を作り上げたかという内容だ。それにしても、好きな作家の作品なのに、理解力不足なんて悔しすぎる。

方で『私の遍歴時代』はエッセイのようですこぶる読みやすかった。どうやら東京新聞に連載されていたようで、万人受けし読み易く、ウィットに富んだ文章だった。もちろん読みやすい=面白い、優れている、好きな作品というわけではない。『太陽と鉄』を読んだ直後だったから、なんとも力が抜けてふにゃりとなった。

島さんの17際から26歳までのいわば修行時代ともいえる期間の、読書体験や文壇事情、交友関係等が色々なエピソードと共に語られる。中でも太宰治さん訪問の時の出来事はやはり印象的で、「キライ」とはいえ同類の部分を感じてしまう。また、青春の特権が「無知の特権」であるという話、それを『仮面の告白』で表したという部分が興味深かった。

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月観た映画『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』に、『太陽と鉄』が登場していた。東出昌大さんの語りでも紹介されたが、討論中にも、確か学生からこの作品について話があった。二十歳そこそこの若者がこの作品を理解するのはなかなかなものだ。さすがの東大生故か。

うそうこの映画、とてもおもしろかった!三島さんの作品が好きか、三島さん本人に魅力を感じている人には楽しめるだろう。言葉を巧みに操り翻弄する議論が飛び交う様が面白いのだが、討論していくうちに、ある意味で同志のように近しい存在になっていくのがわかる。討論する東大生の現在の姿も編集されており、なかなか味わい深い人物になっている。

により強く感じたのは、三島さんの輝く鋭い射抜くような目に、画面からでも惹きつけられること。色々な意味で魅力のある人物だ。今もし生きていたら、どんな方になっているだろうかと想像に耽る。熱・敬意・言葉 、これがあれば日本もまだまだ捨てたもんじゃない。

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