書に耽る猿たち

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『森の生活 ウォールデン』H.D.ソロー/自然界で生きよ

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『森の生活(ウォールデン)』上下 H.D.ソロー 飯田実/訳

岩波文庫 2020.9.11読了

 

ォールデンとはアメリカ・マサチューセッツ州にある湖のことである。この作品は、約170年前にヘンリー・デイヴィッド・ソローさんが2年2ヶ月に渡りウォールデン湖畔で自給自足をした時の生活記録が綴られたものだ。

もなお読み継がれているのは、人間の生き方における哲学のようなものが示されているからだ。人間も自然界のひとつの存在だから、空・海・地、動物、虫、植物など、あらゆる存在と同等に生きるべきだというメッセージが込められ、「人間はどう生きていくのか」を考える指南書のようにも思える。

ローさんは、つぎのあたった服を着ている人がいたとしてもそれを理由に評価を低くすることはないと言う。しかし、世間ではつぎはぎの服を着て外を歩くよりも、脚を引きずって歩くほうがマシだという風潮がある。脚を怪我するほうが良いというのだ。

ほんとうに尊敬できるものよりも、世間で尊敬されているものを重視しているからだ。(上巻45頁 経済)

これは、現代社会における真実を解いている。いくら表面を取り繕い名声に気を取られても、そこに真理はない。真理を見抜くことが大切だと述べている。

た、もし全ての人間が自分と同じような簡素な生活を送るようになれば、盗みや強盗はなくなるとソローさんは言う。

こうした事件は、必要以上に物をもっている人間がいる一方、必要な物さえもっていない人間がいる社会でのみ起こるのである。(上巻 306頁 村)

確かにそうかもしれない。貧富の差があるからこそ、奪い合い、いがみ合いが発生する。自然の中に暮らしていれば悲劇は起きない。

ローさんは、私たち人間の現代の営みについて、8割くらいが間違った認識だと述べている。しかも語り口は自信に満ちていて、これが故人でなかったら叩く人もたくさんいるような気がする。もちろんソローさんの哲学には古さを感じさせず現代に通じるものがあるが、もしかしたら当時は賛否両論があったかもしれない。そう思うと、今まっとうなことを言っているが少数意見故に批判されている人は、もしかしたら何十年か後には讃えられるのかもしれない。

の本を読んで、以前読んだ小説『ザリガニの鳴くところ』を思い出した。沼地に住む少女の物語。これはよい小説だったなぁ。 

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