書に耽る猿たち

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『星の子』今村夏子/読んでいてずっと苦しい

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『星の子』今村夏子 ★

朝日文庫 2020.10.9読了

 

気番組「アメトーーク!」の「読書芸人」で、芸人であり作家でもある又吉直樹さんが一推ししていたのが今村夏子さんの『こちらあみ子』だ。その後『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞した時には、やはり作家が才能を認めた人は本物なんだなぁと感じていた。

まで今村さんの作品は読んだことがなかったのだが、ちょうど今月から芦田愛菜ちゃん主演『星の子』が映画化されるそうで、書店に平積みされていた。愛菜ちゃんは、文学少女で頭も良く清楚で魅力的な少女に成長している。あまりテレビは積極的に見ないのだけれど「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」は結構好き。愛菜ちゃんの将来の夢は、確か医学の道に進むことだ。応援したいなぁ。

愛菜ちゃんの宣伝みたいになってしまったけど、この『星の子』は、想像以上に琴線に触れる作品だった。信仰宗教にのめり込むある家族について、次女である中学3年生のちひろの視点で描かれる物語。もう、読んでいる間、なんだかずっとずっと苦しかった。

ひろはいつも前向きで明るく過ごしている。だけど、何かが苦しい。おかしな行動をする両親や教会の行事、周りから自分や家族がどんな風に見られているかをちゃんと理解しているのに「家族」だから、ちひろは父と母のことが大好きなのだ。苦しいことの理由は多分それだ。両親にちゃんと愛されていて、愛しているとても良い子。だからこそ、苦しいのだ。

え何が対象であれ、信仰は人間の自由だ。キリスト教も仏教もイスラム教だって宗教の一つ。だから信じるものを他人に否定されたりそれが理由で避けることはあってはならない。私も小学生の時と高校生の時にそういう疑いのある同級生を見て、少し距離を置こうと思った時がある。今思えばそんな風に引き気味だった自分が嫌な奴に思える。そうだ、苦しいのは子供の目線で書かれているからという理由もある。

易で読みやすいけれど、大事なものを気付かせてくれる。それでいて隠れている真意が怖くもある文章。平仮名と漢字の使い分けが川上未映子さんに似ている。優しくリズミカルな文体が心地良い。個人的に会話文が多いのはそんなに好きではないはずなのに、何故か嫌だと思えない。

能がある人は1作品読んだだけでわかるものだ。ストーリーや構成や文章だけではなく、人の心の奥深くに針を刺すような何かを今村さんは確かに持っている。他の作品も読みたくなる、なる。