書に耽る猿たち

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『オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティー/色褪せない名作を味わう

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オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティー 山本やよい/訳

ハヤカワ文庫 2020.10.11読了

 

国ミステリの女王、アガサ・クリスティーさんの超超有名な本作を再読した。小説で読むのはかれこれ子供の頃以来かもしれない。映画にもなり日本でも野村萬斎さん主演でドラマになったりと、世界中でこのタイトルを知らない人はいないのではないだろうか。

品が有名なため、子供の頃は勝手に「オリエント急行」はこの作品ために著者が作り上げた列車かと思っていたが、本当に実在している。作中でのオリエント急行は、イスタンブルからカレー(フランス)の豪華寝台列車である。こんな電車、いつか乗ってみたい!

早川書房クリスティー文庫では、はじめにアガサ・クリスティーさんの孫であるマシュー・プリチャードさんの文章が「よせがき」として収録されている。わずか4頁ほどの文なのだが、当時の旅行(特に電車での旅)に対する考え方や、祖母への敬意と愛情が伺われ、何より読ませる文章である。

はり古典でも名作は色褪せない!映像でも観ているからストーリーは知っているが、細かな箇所は忘れていた。本からもくもくと立ち昇るサスペンスの香りと、優雅なオリエント急行を想像する体験は読書ならでわでこれまた味わいがある。

エルキュール・ポアロ寝台列車に乗る全メンバーの証言を取る姿は、緊張感漂い読んでいても一言も聞き逃せないぞと、固唾を飲むような感じ。ホームズじゃないけど、探偵って常に観察眼が鋭いのね。ぼーっとするのは自宅だけなのかしら。

密なプロットは見事であり、読者を唸らせる仕組みがところどころに見受けられる。結末は当時は誰もが唖然としただろうけれど、なんというかこれで良かったと思うはず。ポアロの友人である国際寝台車会社重役ブークの最後の台詞もカッコいい。

週の土曜日に2017年版映画がテレビで放送されていた。ジョニー・デップ等名優揃いだった映画。私はといえばちょうどその時間「出没!アド街ック天国」を観ていたので見逃したのだが…。なんせアド街の舞台は本の街、神保町だったのだ。故意に見逃したわけだが、ふいにアガサ・クリスティー作品を久しぶりに読み直そうという気になった。他の作品も近いうちに。