書に耽る猿たち

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『日日是好日 ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせー』森下典子/日々の気付きを大切に

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日日是好日(にちにちこれこうじつ) ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせー』 森下典子

新潮文庫 2020.11.6読了

 

日新聞が、本のための情報サイトとして「好書好日(こうしょこうじつ)」を運営している。たまに見ることがあるのだが、「好日」繋がりで思い出した。「日日是好日」とは、禅の言葉で「毎日毎日が素晴らしい」というのが文字通りの意味である。

木華さん、樹木希林さん主演の同名映画『日日是好日』がたまたまWOWOWで放送されていた時、ラスト30分程を観たのだが、なんとも心地良い作品だと感じた。日常の生活と情景がただゆるりと流れているだけなのに、空気感が美しく感じたのだ。演じている女優さんの存在も大きいだろう。樹木希林さんはもとより、黒木華さんも着物がよく似合う。

者の森下典子さんが、茶道を習った25年間の日々を想い出しながら「お茶」によって教わったものをエッセイ風に仕上げている。フリーライターなだけあり、誰にでも読みやすく気取らない文章。それにしてもお稽古ごとをこんなに長く続けられるなんて素晴らしい。もう、生活の一部になっている。

茶と聞くと、かしゃかしゃと泡立てたお抹茶、作法にもうるさく、何より正座が辛い、という印象を持つ人も多いだろう。私も子供の頃はそう思っていたが、年齢を重ねるごとに、おそらく味わい深く、茶道そのものが気品を表しているのだろうとは気付き始めていた。

だ想像していただけで、本当に「気品」であることはこの本により確信した。こんな薄い文庫本ではほんの一部しか知り得ないのだろうが、茶道のエッセンスがたくさん詰まっている。お茶そのものよりも、生き方全てに通じるもの。「日日是好日」も文字通りの意味よりも深い解釈がある。

はり、毎日の普通の生活が自分の生き方を形作っているんだなと改めて思う。特別なことは普通の日があるからこそ特別に見える。人は毎日、どんな天気でも、何があろうとも、考え方ひとつで楽しくなれる。1日1日を、何かを気付けるように大事に過ごしたい。

下さんがまだお茶を習いたての頃、三渓園で行われたお茶会で出会った老婦人。80歳を超えてもお婆さんと感じさせない凛とした美しい佇まい。姿形が美しいということではない。誰でも歳をとるわけで、歳を重ねるごとに、本来の美しさとは内面から表れてくるのだと思う。