書に耽る猿たち

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『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』ゲーテ/自己満足だけどなぜか読みたくなる

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『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』上中下 ゲーテ 山崎章甫/訳

岩波文庫 2020.12.7読了

 

イツの文豪ゲーテトーマス・マン氏やヘルマン・ヘッセ氏の本は読んでいるけど、実はゲーテ作品はまだ読んだことがない。ゲーテといえば『ファウスト』なんだろうけれど、戯曲で読みにくそうだなと思い、長いけれどまだ読みやすそうな本作を読んだ。

苦しく読みづらいかと思っていたが、ストーリー性もあり思いの外すらすらと読めた。教養小説と言われているのは、主人公ヴィルヘルム・マイスターが数々の困難を乗り越えて成長する様が書かれているからだ。いわゆる学問的な意味ではなく、心の成長のようなもの。

る章を境に前半と後半で異なる小説を読んでいるかのような錯覚になる。前半は、初恋に破れたヴィルヘルムが演劇の道に進む。一座が旅をするかのように各地を巡業するのはまるでサーカスの団員のよう。演劇をテーマにしているから、シェイクスピアの戯曲が頻繁に登場する。特に『ハムレット』は、ヴィルヘルムが自ら舞台作品とし力を入れる。

ェイクスピアを読み込んでいたほうが理解が深まるだろう。読んでいると、小学生の時に演劇クラブ(遊びに毛が生えた程度のもの)で『リア王』を演じたのをふと思い出した。演劇、芝居に造詣が深い人は結構楽しめる作品かもしれない。

半は、秘密結社(たぶん、フリーメイソン?)が登場し、恋愛模様や信仰がテーマとなっているため、まるでトルストイ著『戦争と平和』を読んでいるようだった。前半あんなに熱心だった演劇のことも全く触れられず、ヴィルヘルムが生きる上で何が大切なのかを説いていく。

に2〜3冊は岩波文庫に収められているような古典的名作を何故か読みたくなって、結果、読了感はいつも同じでほぼ自己満足の世界である。ちなみに、この作品は『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』という続きがあるようだ。うーむ、よほどでないと読まない気がする。

外文豪の長編小説では、かなり前から、敬愛するディケンズさんの自伝的小説『デイヴィッド・コパフィールド』を読みたいのだけど、欲しい岩波文庫石塚裕子さん訳)の本が手に入らず、中古でもかなり値段が上がっている。それでも岩波文庫は確か「絶版」という概念がなく、リクエストがあれば復刊するから気長に待つしかないかな。