書に耽る猿たち

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『約束の地 大統領回顧録 Ⅰ 』バラク・オバマ|選挙戦と第1期めの任期|隠れた英雄を讃えよう

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『約束の地 大統領回顧録 Ⅰ 』上下 バラク・オバマ 山田文 三宅康雄・他/訳 ★

集英社 2021.4.24読了

 

売されてすぐに購入していたのが、なんだか読むのが勿体ないような、心を落ち着けてこれに挑む準備をしてからにしよう、など思っているうちに2ヶ月くらい経ってしまった。敬愛するオバマ米大統領回顧録である。私はオバマ夫妻お2人のことが大好きである。

統領時代を振り返る自伝であるが、単純に読み物としてとてもおもしろかった。上院議員を経て大統領になるまでの選挙戦の道のりと、第44代アメリカ合衆国大統領としての1期めの4年間(実際に彼は2期務める)の任期の出来事を回想している。

下巻で結構ボリュームもあるのに「大統領回顧録 Ⅰ 」となっているのは、「Ⅱ」も予定されているのだ(実は初めはこの「Ⅰ」に気付いていなかった)。まだ半分だと考えると長いなぁ。

バマさんの政策。医療保険制度(オバマケア)の制定、チェコの首都プラハで「核兵器なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受賞したこと、そして、アメリ同時多発テロを引き起こしたアルカイダの指導者ウサマ・ビン・ラディンの殺害。世界情勢と当時のアメリカの状況がよみがえるようだ。

があったかだけでなく、誰と会い、何を話し、そして何を思ったかが克明に記されている。関係者に話を聞いたり、当時日記やメモをつけていたとはいえ、こんなにも詳細に綴られていることに驚かされる。オバマさんの頭の中はやはり半端じゃない。

統領就任式の日にソマリア国籍の人からテロ攻撃を仕掛けられていたという。アメリカ合衆国の大統領になるということは、それだけで危険と隣り合わせであるのだ。大統領であること、その仕事量と困難とストレスは図り知れない。

ちろん全てを大統領1人で判断したり行動するわけではなく、オバマ政権の閣僚や身近なスタッフの力と信念があってこそだったのだとわかる。どんな仕事でも同じだ。チームとなって作り上げる。

シェルさんとの出逢いについては、読んでいるだけで胸躍らせる。バラクさん側から書かれたものだからかボリュームは少ない。やはり恋愛よりの部分は女性の方がうまく書くのだろう。自伝という体だから男性側は照れてしまうのか。ともかく2人は出会うべくして出会い、その後の(そしてこれからも)ベストパートナーとして歩んでいく!お互いを尊敬しあえる姿が美しい。

ラクさんが困難な選挙戦や8年間の大統領時代を過ごせてきたのは、自分自身の資質によるものと述べている。そして常夏の気候、海までもすぐそばというストレスを感じないハワイで生まれ育ったこと、そして祖母による影響もあるという。

挙活動最終日、つまり投票日前日に祖母が亡くなった時に「隠れた英雄」の存在を思い浮かべたそうだ。これを教わったのも祖母からだった。表面的には目立つ英雄だけが取り沙汰されるが、何かを成し遂げるのには縁の下の力持ちならぬ「隠れた英雄」がいることを忘れてはいけない。

統領回顧録として書かれているけれど、時折はさまれる妻ミシェル、娘のマリアとサーシャについてのエピソードに心が和む。家族への愛情が溢れんばかりだ。身近な人を大切に想えないと、誰かを助けること、ひいては国民を守ることなんて出来ないのだ。

うしてこんなに勇気と希望をもらえるのだろう。産まれも国籍も、育った環境も、周りの人も違う。なによりも素晴らしく有能で実行力のあるオバマさん。一生のうちにとうてい会うことすら叶わない雲の上の存在なのに、こんなにも強いメッセージを貰える。身近な人でなくても、心は通じる。ということは自分自身も見ず知らずの人に何かを伝えられるということなのだ。

当はバラクさんの出生や子供時代のことをもっと知りたかったが、これは過去の著作『マイドリーム』に書かれているため敢えて省略されてあるようだ。『マイドリーム』はまだ読んでいないから、近いうちに探そう。そして、回顧録Ⅱの刊行も楽しみに待とう。

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