書に耽る猿たち

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『五匹の子豚』アガサ・クリスティー|回想殺人|絶対おすすめ

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『五匹の子豚』アガサ・クリスティー 山本やよい/訳 ★

ハヤカワ文庫 2021.5.4読了

 

リスティーさんの作品は、有名なものはほとんど読んでしまったからかしばらく遠のいていたのだけれど、有名でなくともおもしろい!ということを証明する作品だった。とはいえ、この『五匹の子豚』はファンからすると充分有名だし、名作との呼び声も高い。ポアロシリーズの長編のうち21作目である。

アロの元に、カール・ルマンションという若く美貌の女性が調査の依頼をしに来る。16年前に起きた父親殺害事件に関し、すでに有罪で獄中死した母親の無実を信じて。母親は犯人ではない、真実を知りたいのだと。事件に関与した5人を豚にイメージさせ、ポアロが過去の調査に乗り出す。

去の事件を洗い直すという意味では、先日読んだエラリイ・クイーン著『フォックス家の殺人』を思い起こす。構成の上手さ、登場人物の回想に関する記述の仕方が自然で、個人的にはクリスティーさんのほうに分配が上がる(クイーンファンの方、ごめんなさい)。

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わたしの成功の基礎となっているのは、心理の探究です。人間の行動に対する「なぜ?」という永遠の問いかけ。ムッシュ・ブレイク、現代においては、犯罪のその点に関心が向けられています。(104頁)

れは、ポアロの調査における信念だ。何故殺したか(ホワイダニット)を探るミステリはもしかしたらクリスティーさんから流行り出したのだろうか。人間心理の探究のためのポアロの推理、物事の捉え方が非常に興味深い。

まで読んだクリスティー作品の中で、こんなに犯人と謎解きを考えたことはなかった。こういう気持ちになるのがミステリーの醍醐味でもあるんだと改めて感じる。ミステリ好きな人は常にこうして読んでいるのだろうけど、私は文体を楽しんだり、純粋にストーリーを追って読むことが多い。今回は久しぶりにミステリに単純にのめり込んだのだ。もちろん、登場人物のウィット溢れる会話も楽しみながら。

局、私の推理としては少しかすったかな?くらいで当たらなかったのだけれど、当たってしまうのは読んでいてつまらないから、これでいい!作者に騙されないと。ミステリだから内容を語ることは出来ないのが苦しいが、この作品は一級品だ。まだ未読の方は是非読んで欲しい!今のところポアロ作品で人に薦めるなら、この『五匹の子豚』か『葬儀を終えて』だ。

れにしても、他のクリスティー文庫の表紙は写真で、著者のサイン筆跡も入っていてカッコいいのに、どうしてこれだけ違うんだろう。と思ってカバーを捲ったら、 1977年に刊行されたハヤカワ・ミステリの装画復刻らしい。読み終えてこの絵をじっくり見ると意味がわかる。

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