『地球星人』村田沙耶香
新潮文庫 2021.5.11読了
村田沙耶香さんが芥川賞を受賞した『コンビニ人間』は、刊行当時大変話題になった。コンビニ人間なんて、時代を象徴しているなと思ったりしたけれど、これからは無人のお店も増えたりして、いつかは古くさく感じたりするのかとも思ったりもする。歴代の芥川賞受賞作の中では、物語性もありなかなかおもしろく読めた。
村田さんの作品を読むのはそれ以来だ。この『地球星人』は、なんとも奇妙奇天烈でぶっ飛んだ話でびっくりした。途中まで読んで、ちょっと気持ち悪くなってしまう。その気持ち悪さは主人公奈月の幼少期までがピークで、大人になってからは幾分ましになったのだが。でもまた最後がちょっとグロテスクだ。
奈月は自分のことを魔法少女だと思い、従兄弟の由宇は宇宙船から捨てられた宇宙人ではないかという。そんな従兄弟同士の2人は年に一度、お盆の時にしか会わないのだが、いつしか共通のこの想いから婚約をする。そしてある事件が起こってしまう。
お互いの家庭の複雑な事情から疎外感や孤独を感じ、自分の居場所はどこなのか、どうしたらうまく生きていけるのかを自分なりに考えた結果が、地球人を客観的にみることだったのだ。なんとまぁスケールの大きい、けれど散りばめられた断片は実際にありそうなストーリー。さすが「クレイジー沙耶香」と呼ばれているだけあるかも。
最初の数頁を読み、タレント小倉優子さんの懐かしき「こりん星」がよぎった。また、三島由紀夫さんの『美しい星』を少し想像してみたりしたが、作品としては全然違った。そうそう、今4週に渡ってNHK の番組『100分de名著』で『金閣寺』が取り上げられているから(しかも解説は平野啓一郎さん!)、三島作品また読みたくなってきたなぁ。