書に耽る猿たち

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『郝景芳短篇集』郝景芳|現代中国人作家が気になってきた

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『郝景芳(ハオ・ジンファン)短篇集』郝景芳 及川茜/訳

白水社 2021.5.12読了

 

国系アメリカ人作家のケン・リュウさんが郝景芳さんの『北京 折りたたみの都市』を絶賛して英訳し、作品はヒューゴー賞を受賞した。ケン・リュウさんがこの作品を含め中国SFアンソロジーとして何人かの短編をまとめた本(早川書房より出版)を読むつもりだったのだが、先日『郝景芳さんの『1984年に生まれて』がとてもおもしろかったから、郝さんに特化しよう!と思いこちらの短篇集を読んだ。もちろん『北京 折りたたみ〜』も収録されている。

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7つの短編が収められているが、どれもなかなか読み応えがあった。中国SF作家と言われている郝さんであるが、SFに慣れていなくとも読みにくさは感じられない。現代社会が抱える闇のようなものをテーマにしており、考えさせられる作品が粒揃いだ。

でも『北京 折りたたみの都市』、これがやはり突出していた。北京という都市が3層の空間に分かれており、一定の時間になると都市自体が折り畳められてしまうという作品。よくある立体の絵本や飛び出すバースデーカードのようなものを想像してしまう。こんなストーリーを思いつくこと自体がセンスの塊だ。

ミ処理の仕事をする老刀(ラオダオ)が主人公で空間を行き来する。機械化によりいずれは労働力が不要になるかもしれない未来を予想してしまう。将来、どうなるんだ?と少しの不安を抱く。結局どんな世界に住みどんな地位にいても、人の幸福なんてものは変わらず、考え方さえ変えれば誰にでも享受されているんだと思う。この世界にいるから幸せ、というものはそもそもなく自分がどう生きるかなのだ。

者の解説によると、早川書房から刊行されているアンソロジーは、ケン・リュウさんの英訳を和訳したもので、今回私が読んだ訳とは異なるらしい。読み比べたいなぁ。そして、他の中国作家の作品も少し気になり始めてしまった。

して、郝さんはこの作品を長編小説として執筆しているようで、映画化の計画もあるという。この解説が書かれたのが2019年のようだから今はどうなっているのだろう。いずれにしても長編になったらよりおもしろいはず!いつか邦訳が出ることを期待しよう。