書に耽る猿たち

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『世界はゴ冗談』筒井康隆|インパクトがありすぎる短編集

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『世界はゴ冗談』筒井康隆

新潮文庫 2021.6.26読了

 

題作を含めた10作品が収められた短編集である。筒井康隆さんの作品を読むのは久しぶりだ。そして彼の短編というのも初めてだ。いや〜、奇想天外なストーリーづくしでたまげる。一話めから、タイトルからし『ペニスに命中』だもんなぁ。強烈な痴呆老人のある1日を描いたこの作品は、ボケっぷりが強烈でなんだかたくましいほどだ。

10作品の中で印象的だった2作品について簡単に。

 

『不在』

男性の生き残りが少なくなっていき、女性だけになりつつある世界を描いたこの小説はディストピア作品と言える。生きている妻は普通に老いていくのに、震災を機に寝たきりになってしまった夫は、時が止まり老化もなくそのままの状態で数十年後に目覚める。冷凍保蔵された人間を描いたハインライン著『夏への扉』を彷彿とさせる。

別の世界を生きた夫は過去に妻が知っていた夫ではなくなっていた。妻の心情を思うとなんとも苦しいが、もしかしたら今を生きる人同士でも同じ時間が同じように流れているわけでもないのかなと思ったりもした。

 

『三字熟語の奇』

ただ三字熟語だけがひたすら書かれているだけのもので、インパクトがありすぎた。電車の中で文字を追っていたら、隣にいたサラリーマンのおじさんにジロジロと見られてしまった。漢文でも読んでいるのかと思われたかも。

一体何語書かれているんだろう?関連のある言葉が並び、「羽二重」や「五目鮨」なんて見てるだけでちょっとお腹が空いてきたり。終盤は、こんな三字熟語なんてあるのかな?と思っていたら、当て字をはめた筒井さんならではのジョークだった。参った、参った。

 

井さんのこの手の作品群が好きかどうか聞かれたら…、個人的には決して好みとは言えないのだけれど、強烈なインパクトを残すことは確かだ。こんなモノの見方をしていて、独自の世界観を生み出せる才能は恐るべし。鬼才、怪物と言われる所以がわかる。