書に耽る猿たち

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『汚れなき子』ロミー・ハウスマン|違和感を少しずつ埋めていくミステリー

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『汚(けが)れなき子』ロミー・ハウスマン 長田紫乃/訳

小学館文庫 2021.7.24読了

 

る女性が事故のため救急車で病院に搬送された。一緒に運ばれたのは13歳のハナという少女。ハナの証言から、2人はある男性に監禁されていたことがわかる。物語は、ハナ、運ばれてきた女性レナ、そしてレナの父親マティアスの視点によって語られていく。レナは14年前に失踪して以来、見つかっていないのだがー。

み進めていくにつれ、だんだん違和感というか、何かおかしいなと思い、その真相を知るべく頁をめくる手が止まらなくなる。「え?どういうこと?」「誤植では?」となる場面も多いのだが、そんなにしんどくはない。それぞれの語り手のパートが比較的短く、すぐに次の語り手にバトンタッチするという構成だからだ。

が子を守る母親の愛情と、失踪した娘を失念深く探し続ける父親の姿に胸を打たれる。それから、報道のあり方にもやはり憤りを覚える。日本だけでなく、どんな国のマスコミも本当に当事者や被害者のことを考えていない。

めて読むドイツ人作家の作品である。母国では推理作家協会賞という賞を受賞されているから、まぁミステリーだろう、と思い読み始めた。ただ、普通のミステリーの謎解きよりも、痛々しい事実を突きつけられて、読んでいて胸をえぐられる気持ちになる。この本を知ったきっかけは、おたま (id:shiratamaotama)さんのブログで紹介されていたから。

したのは長田紫乃さんといっておたまさんの大学の先輩であるという。小説の翻訳はこれが初ということで、だからなのか少し表現が堅苦しい部分もあったように思う。経歴をみると俳優ともあるから珍しい。翻訳家はとても魅力のある職業だと思っているので、これからも多く手掛け新たな小説を日本に運んで欲しい。