講談社文庫 2021.10.9読了
単行本が刊行された2年前、かなり話題になっていたのも知っていたが、私は読まないだろうと思っていた。美少女チックな表紙のイラスト、城塚翡翠(じょうづかひすい)なんていうキラキラネームのような名前の主人公、私には合わないだろうなと感じていたのだ。
売れるにはそれなりの理由があるのだろうし、また「読まず嫌い」は良くないと感じ、文庫化されたタイミングで「えい!」と買った。霊媒探偵自体が胡散臭く「犯人が見えました」なんていう結論も本格ミステリじゃないよな〜と思いつつも、霊的な存在自体は嫌いじゃないし京極堂シリーズも鬼太郎も大好きだ。
霊媒師の城塚翡翠と、ミステリ作家の香月史郎(こうげつしろう)が2人で難事件を解決していくというストーリー。翡翠には特有の「匂い」を感じることができ、「あの人が犯人だ」とわかってしまう。しかし証拠がないと犯人逮捕はできない。証拠から探すのではなく、犯人が先にあってそこから証拠や理由を探っていく。
単行本刊行時に「全てが伏線」というキャッチコピーがありそれが話題になっていた。そんなうたい文句があるから慎重に心して読んでいたが、最終章では驚いてしまった。確かに違和感みたいなものがつきまとっていたから「あぁ、そういうことか」という納得感。二重の推理になっているのが斬新であり伏線回収はお見事だ。私が予想していた一部の推理が外れてしまったのはずっこけたけど。
相沢沙呼さんの流れるような文章が、ページを捲る手をより早めさせる。読む人を選ばず、誰もが読みきれる作品だ。ライトノベル作家でもあるからラノベよりのミステリーだろうか。そもそもラノベの線引きがわからない…。
小中学生の時に好んで読んでいたコバルト文庫の日向章一郎先生の小説群を思い出した。個人的にちょっと物足りなさはある(どうにも翡翠のキャラが苦手で。ファンの方ごめんなさい)けれど、たぶん若い読者や読書の楽しさをまだ感じられていない人にはもってこいの作品だと思う。そうそう、相沢さんは女性だとずっと思っていたから男性であることにも驚いた。