書に耽る猿たち

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『からゆきさん 異国に売られた少女たち』森崎和江|こんなことが150年前の日本であった

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『からゆきさん 異国に売られた少女たち』森崎和江

朝日文庫 2021.11.27読了

 

年も前に新聞の書評にこの本が載っていた。気になってすぐに購入していたのだが長く家に眠っていた。このタイミングで読んだのは、つい先日岩波文庫から、『まっくら』という同じく森崎和江さんの本が出版されたことで思い出したからだ。

「からゆき」とは漢字で書くと「唐行き」である。江戸末期、朝鮮・唐天竺へ働きにいくことを「からゆき」と呼び、そういった出稼ぎをする人は「からゆきさん」と呼ばれていた。それがやがて海外に売られた少女を指す言葉になっていった。

崎さんは、友人である綾さんが複雑な家庭にあることを知る。綾さんの母親おキミさんは「からゆきさん」とかつて呼ばれた人で、未だに心と身体を病んでいるそうだ。森崎さんは「からゆきさん」のことを知るべく明治時代の新聞を読み漁り、九州地方へと取材に向かう。それをまとめたのがこの作品である。

んでいてずっと辛かった。おキミさんだけではない、僅か12〜13歳で男女のあれこれもわからない少女たちが貧しさゆえに転々と売られていく。性を売ることへの抵抗感や罪悪感が今ほどはなかった時代ではあろうが、だからこそそうやってしか生きられなかった女性のことを考えると胸が痛む。   

れは小説ではなくノンフィクションだから、実際にあったことなのだ。わずか150年ほど前に、この日本で、このような人身売買が行われていたこと、このような女性たちがいたことを忘れてはならない。