書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『禁色』三島由紀夫|女性への復讐、なれの果て

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『禁色』三島由紀夫

新潮文庫 2022.1.1読了

 

に出る時、帰省する時、遠出をする時にお供にする本はいつも非常に迷うものだ。列車や飛行機などの移動中を始めとして、読書にかける時間は結構多い。持っていった本に失敗すると途方もなく残念になるから、間違いのない本を持っていく。

の『禁色』を読むのは実は2回目である。先日の「アメトーーク」の読書芸人で、ラランド・ニシダさんがこの本を紹介していた。男色家の話だとは記憶していたが意外と覚えていなく、ニシダさんの紹介を聞いていてまた読みたくなったのだ。またしても影響されて…。

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作家の檜(ひのき)俊輔は、3度の結婚に失敗、数多くの恋愛にも敗れ憂いていた。そこに、美貌の青年南悠一が現れる。女性の誰をもとりこにするこの美青年は果たして男色家であった。俊輔は、悠一を利用して過去の女性に復讐しようと思い付くのだった。   

輔が悠一を操るままに女性に復讐していく様はミステリ感満載でスリリングである。そのうちに悠一の本心があらわになる。

「僕はなりたいんです。現実の存在になりたいんです」

俊輔は耳をすました。それは彼の芸術作品がはじめてあげた嘆きの声を聴くように思われた。(233頁)

一は、初めて苦悩と孤独を表した。この世界に復讐をしようと一番苦しんでいたはずの俊輔ではなく、悠一が悶えていたのだ。自分が本当に愛するのは男性だということを秘密にしなくてはいけないことに心底疲れたのだ。本心を隠さなくてはいけないこと、これほど苦しいことがあろうか。

輔と悠一の2人の主人公の心理が変化していく様子がおもしろい。衝撃のラストシーンははたして誰を苦しめるのか。匂い立つ艶やかな文体がこの妖艶な世界に見事にマッチしている。『仮面の告白』と同様に、同性愛を描いた三島文学の極みと言える。現代でいえばBL小説とも言えるのだろうけど、三島さんが描くと深みと文学性の奥行きが増すのだ。

島さんの作品は元々読むのに時間がかかる(文章を噛みしめて読む)のだけど、この作品はよりボリュームがあり長かった…。旅路で読み切ったらどうしようという不安はなんのその、家に帰りついてもまだ栞が挟まれているのはちょうど真ん中あたり。年末に読み切るつもりが年をまたぐことに。さて、2022年も皆さまにとって素敵な本との出会いがたくさんありますように。

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