書に耽る猿たち

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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』アンディ・ウィアー|ユーモアたっぷり、爽快な宇宙SF

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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』上下 アンディ・ウィアー 小野田和子/訳

早川書房 2022.4.11読了

 

年末に刊行されてから話題になり、めちゃくちゃ売れているようで気になっていた。正直、SF作品は得意ではない。それでも単行本上下巻なのに翻訳ものにしては意外と安価で思わず購入してしまった。著者の最初の作品『火星の人』は読んでいないし、映画(映画タイトルは『オデッセイ』)も観ていないけれどなんとかなるだろうと。

ジョン、ポール、ジョージ、リンゴに。

頁めくるとそこにはこう書かれていた。これってビートルズのメンバーではないのか!?と不思議に思いながら読み進めて行く。そう、途中で解き明かされるこの意味ににんまり。

が覚めたらどこにいるのか、自分が誰なのかわからない。これだけ聞くとカフカ著『変身』を彷彿とさせる。いや、これはそういう話ではなくて地球規模の話だ。記憶をなくした主人公が、少しずつ過去を思い出しながらなんとかやりくりしていく、その過程がおもしろい。

手に同意するのも、自分で独り言をいうにも「オーケイ」「イエス」などが連発する。邦訳なら「はい」にするところが訳者からするとやはりこれは「オーケイ」でないとダメなんだろうな。至る所にユーモアが溢れていて、ちょっぴり切なくもあるが爽快な宇宙SFだ。

クライナとロシアの戦争について、子供たちに絵本を読み聞かせながら戦争の悲惨さ伝えることを薦めるTV番組を観た。人間は生きる、生活する上ではみんな同じ人間なのだということ、文化だけは生き残り他国にも広まると解説者は話していた。もしかすると、地球上の文化も、異なる惑星にもたらすことができるのではないか。逆も然り。そんなことを考えてしまった。

人公は、これからの未来を担う子供たちに科学・環境問題などを引き継いで行かなくてならない、準備を整えてやらなくてはならないと言う。これは宇宙SFの世界に限るわけではなく、どんなものであれ若い人道筋を立てることは大事だ。

想はしていた通り、理系が苦手な私なので、すごくおもしろいという感覚には至らなかったのだけれど(何しろあんなに評判の『三体』も1巻だけで断念したのだ…)、なかなか楽しめた。何より訳のせいかすらすら読めた。理科の実験や物理の数式を解くのが好きな人にとっては最高におもしろいだろう。SF理解能力が高ければ超絶興奮するはず。科学脳を持っている人が羨ましい!