書に耽る猿たち

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『時のかなたの恋人』ジュード・デヴロー|夢見る乙女のためのタイムトラベル・ロマンス

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『時のかなたの恋人』ジュード・デヴロー 久賀美緒/訳

二見書房[二見文庫] 2022.4.23読了

 

イムトラベルで恋愛ものって、もうそれだけで甘ったるいんだろうな、昼ドラみたいなのかなと予想していたけれど、読んでみると意外とドロドロした感じはなくサラサラだった。

体を味わうとか行間を読むといった文学の一つの醍醐味を堪能する感じではなく、ただひたすら文章を読みストーリーを追うという読書になったのだが、物語性が豊かで分厚いのにあっという間に読み終えてしまった。結末がどうなるのかはある程度予想がつきほぼその通りだったのに、ラストにはほっこりとした気持ちになった。

人とイギリスに旅行中のダグレスは、喧嘩をしてしまい見ず知らずの地に置き去りにされてしまう。そこに突然中世(16世紀の英国)から現れた伯爵、ニコラス。初めは何かのいたずらかと思っていたダクレスも、徐々にニコラスに惹かれていき、彼が何故400年の時を超えて現代に来たかを調べるようになる。共に生活していくうちに2人の関係性も深まっていく。しかし、ニコラスはいずれ過去に戻ってしまうのかー。

ス・マープルの名前がよく出てくる!ダグレスは読書好きでアガサ・クリスティ作品が大好きなのだろう。何かというと「ミス・マープルなら…」と言うのだ。アメリカ人がイギリスに旅行中の設定で歴史要素もてんこ盛りだから、著者はきっとイギリスに憧れているのだろう。読んでいて中世イギリスの生活様式や文化、貴族の嗜好など、読んでいて私も興味津々だった。

そらくこの本はハーレクイン文庫に収められるような作品だ。普段ロマンス小説は滅多に読まないのだけれど、気分がほぐれる夢見心地を味わえた。とはいえ、もう甘々ロマンスはお腹いっぱいかな〜。きっとこれは中高生の女子が読むのが一番だ。自分にはいつか白馬の王子様が現れると信じて疑わないまだ若き乙女が読むべき。きっと幸せな気分になれる。

イムトラベルものならスティーヴン・キング著『11/22/63』や宮部みゆき著『蒲生邸事件』が好みだ。もちろん『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は鉄板。これは小説というよりも映画がピカイチで、今でも私が好きな映画のNo. 1の座に居座り続けている。