書に耽る猿たち

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『事故物件、いかがですか? 東京ロンダリング』原田ひ香|不動産にまつわる数々のドラマ

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『事故物件、いかがですか? 東京ロンダリング』原田ひ香

集英社集英社文庫] 2022.5.24読了

 

田ひ香さんの『三千円のつかいかた』はベストセラーになり書店でもうず高く積み上げられていた。金融関係の本かと思っていたが小説だと知ったのも結構最近である。この本は文庫新刊コーナーで見付けたもの。過去に刊行された『東京ロンダリング』という作品の続きのようだ。

ームロンダリングとは原田さんが作った架空の職業である。自殺や変死、事件など何らかの曰く付きの事故物件では、通常は不動産の賃貸募集の際に事故物件とは言わず「告知事項あり」という表記をし説明をする。ただ事故後の最初の入居者だけなので、誰かが1ヶ月だけ住むことでその次の入居者に説明を回避できる。1ヶ月間入居するロンダリングをする人のことを「影」と呼ぶ。あまりにもリアリティがある!

ロンダリングを背景にして大家さん、不動産会社の社員、失踪者、失踪者を探す人、入居する人などの視点で物語になる連作短編集のように構成されている。住宅というあまりにも身近な問題だからすぐそこで起きていそうな数々のエピソード。

踪と聞くと世間は騒ぎ立てるし、身近にいたら私もとても慌てて心配するだろうけれど、実はたくさんいるんだと思った。去年、確か中日ドラゴンズのコーチで失踪した方がいた。失踪者は自分が何故失踪するのかもわかっていないケースも多く、周りはそれを見守ること、つまり戻ってきた時に居場所を残しておく(今まで通りに)ことが一番大事だということがわかる。 

し前に事故物件を扱ったソフトカバーの本が売れていた記憶がある。地面師の本もあった。不動産は大きなお金が動き、「土地ころがし」と言われて悪徳のようなイメージがある。それでも人は不動産が好きでそこから生まれるドラマは猛々しい。住宅というのは、生活する上で切っても切れないものだから。読みやす過ぎてスルスルズブズブだったけれど、心を浄化する作用が至るところに散りばめられていて、現代人の心の傷を和ませる。

はドラマはほとんど観ないのに、仕事柄(不動産会社の事務職なので)か山ピー(山下智久さん)主演の『正直不動産』だけは結構おもしろく観ている。