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『独り舞』李琴峰|台湾人から日本語を教わる

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『独り舞』李琴峰

光文社[光文社文庫] 2022.9.16読了

 

前読んだ李琴峰さんの『ポラリスが降り注ぐ夜』がとても良かったので、デビュー作で群像新人文学賞を受賞されているこの作品を読んだ。テーマは『ポラリス〜』と似ており、性的マイノリティに悩む若者の影と光を描いた小説である。

40年以上生きてきてそれなりに本も読んでいるはずなのに、「風声鶴唳(ふうせいかくれい)」も、「草木皆兵(そうもくかいへい)」も、初めて見知った四字熟語だ。どちらも「少しのことでも驚いて、恐れて怯えること」の意味で故事から来ているらしい。また、そばかすを「雀斑」と漢字で表現するのは見たことがなかった。そんなに難しい漢字ではないのに、どうして常用をひらがなにしたのだろう。漢字のほうが美しいのに。

湾人から日本語を教わることがあろうとは。元々日本語は美しいと思っているが、私たちが知らないだけで、本当は日本語はもっともっと深く気高いのだろう。改めて、李さんは日本人よりも美しい文章を書くよなぁと感じ入る。

の小説の文体で、どこか独特の印象を受けるのは、主人公の趙迎梅(ジャウインメー)の名前を主語にせず「彼女は」という代名詞で文章が始まるところだ。だからか、少し距離をおいて見ているような印象を受ける。おそらく、別に日本名も呼び名もある彼女だから、名前なんて実はどうでもいいのかもしれない。

しかしたら、同姓同士の恋愛の方が相手を失った時の悲しみや喪失感は大きいのかもしれないと思った。男女であれば、別れの理由や感性が合わなかったときに「異性だから」とある意味開き直れるというか逃げの理由に出来る。同性だと「わかりあえて一緒になれたはずなのにどうして」と思ってしまう分ショックが大きいんじゃないか。

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