書に耽る猿たち

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『青年』森鴎外|自己の内面を見つめて成長していく

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『青年』森鴎外

新潮社[新潮文庫] 2022.10.27読了

 

か読んだことないはずだ。夏目漱石さんの作品はほとんど読んでいるが、そもそも森鴎外さんの作品は1~2冊しか読んでいないはず。代表作『舞姫』を読もうとした時、文語体でとてもじゃないと読めないと断念した記憶がある。

人公の青年の名前は小泉純一(ほとんどの人が元首相小泉純一郎を連想してしまうだろう)、彼は作家を目指して田舎から上京する。住まいに遊びに来る若い女性や謎の未亡人など多くの人との交流のなかで、自己の内面を見つめて成長していく青年の姿が描かれており、教養小説と呼ばれている。

年期の女性に対する感情が丁寧に綴られる。特に、坂井未亡人との出逢いを日記として記すところや、友人大村との会話が興味深かった。そしてまた、古き時代の東京の街並みが浮かんでくるようだ。上野あたりの城東エリアを拠点としているが、純一は電車に乗り、そして徒歩で色々な場所を巡る。

語の終盤は箱根が舞台となるのだが、文豪が泊まったとされる有名な「福住楼」がまたもや出てきた。箱根は、かの有名な富士屋ホテルを初めとして数ヶ所の旅館に泊まったが、なんといっても「福住楼」は一番印象に残っている。

治の頃の小説ではあるが、注釈がちと多すぎる!文庫本の終わり1/4程が注釈でしめられていてそれ自体うんざりするが、文中の単語の右側にある「*」マークの多さに、より一層うんざりしてしまう。さらに、フランス語やドイツ語が入り混じってるのがまたまた小難しい…。文語体の『舞姫』は、現代語訳のものが刊行されているようだから、それに挑戦してみようかな。