『牧師館の殺人』アガサ・クリスティー 羽田詩津子
ミス・マープルシリーズの最初の長編がこの『牧師館の殺人』である。順不同に読んでいるから今さら順番はどうでもいいのだけれど、なんとなく最初の事件は早めに読まないとなと思ってしまう。ポアロシリーズのほうが名作は多いけれど、探偵個人としてはマープルの方が好きなんだよなぁ。
たしかにむだなおしゃべりはほめられたものではありませんし、残酷ですけど、たいてい真実をついていますのよ(38頁)
長く人間観察をしてきたマープルの言葉。そう、井戸端会議での会話は意外とみんなが気になる話題だ。もちろんとんでもないほら話もあるが、真実もある。煙のないところに火はたたないとも言うし…。だからこそ人の噂話は怖いし、悪口を言われてるんじゃないかと気になったりもする。
田舎町のセント・メアリー・ミード村にあるマープルが住む家の隣の牧師館で殺人事件が起こる。嫌われ者のプロザロー大佐だったから殺されてもおかしくないし、容疑がかかりそうな人もちらほら。自首する人が現れたりそれを庇う人も現れたり。
語り手はクレメント牧師である。マープルがちょい役であるかのように、たまにしか現れない。ま、クリスティー作品にはこういうのがよくあることなんだけど。これは、、とクレメントがもしかしてとか医師のヘイドックがあるいは、、なんて疑ってしまうのは推理小説の読み過ぎだろうか。
いつものクリスティー作品と同様に、登場人物が多い!しかもマープルをはじめおばさま方が多いからか「わちゃわちゃ」して、他の作品に比べると、考えること(推理しなくてはならないことだけでなく整理すべきことも)が多い気がする。安定のクリスティー作品なんだけど、他のマープルもののほうがスッキリしてまとまっている気がする。
そうそう、マープルものの短編といえば『火曜クラブ』だが、去年めちゃめちゃ楽しめたリチャード・オスマン著『木曜殺人クラブ』の続編が先日発売されていた!早く読まないと。