書に耽る猿たち

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『真珠湾の冬』ジェイムズ・ケストレル|読みやすい歴史ロマン大作

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真珠湾の冬』ジェイムズ・ケストレル 山中朝晶/訳

早川書房[ハヤカワポケットミステリー] 2023.1.9読了

 

ケミスは手にして読んでいるだけでもやっぱりワクワクする。でも文庫に比べて高価だから、よほど好きな作家以外はチェックしていない。この作品も著者も知らなかったのに手にしたのは、真珠湾、つまり真珠湾攻撃で日本が関わっているから日本人であれば読むべきかなと思ったのだ。登場人物紹介にも日本人の名前がちらほら。そして、何よりもエドガー賞アメリカの文学賞で、優れたミステリ作品に授与される)を受賞しているのがポイントだ。

 

ワイ・オアフ島での惨殺事件から幕を開ける。担当の任に就いたホノルル警察警部のマグレディは、ある手がかりを追うため香港に向かう。そこで日本軍による真珠湾攻撃が始まり、マグレディも戦下に巻き込まれてしまうのだー。

わゆる王道の警察小説で始まるのだが、中盤からはそれを忘れてしまうほどの歴史ロマン大作になった。ホノルルに残したマグレディの恋人モリーとの関係、同僚で相棒のボール(結構好きなキャラクターだ)はどうなってしまうのか、そもそもの惨殺事件の犯人のことよりも、ロマンスのほうが気になってしまった。

音放送を、日本の小説以外で私が目にしたのは初めてかもしれない。そもそもアメリカ人がこの戦争を書くのなら、日本にあまり良くないイメージで書かれているかもと覚悟していたのだが、そんなことはなかった。おそらく著者のケストレル氏は、事実は事実として受け止めながら、日本のこと、日本人のことを大切に思っている。

 

んでみて感じたのは、早川書房で刊行される海外のミステリー、サスペンスの中ではかなり読みやすいということ。それもやはり馴染み深い日本の地名や日本語の名前がたびたび登場することも大きいだろう。スケールが大きく、サスペンスとロマン要素がうまく融合しているため、老若男女問わず楽しめる作品なのは間違いない。