書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

『ウィンダム図書館の奇妙な事件』ジル・ペイトン・ウォルシュ|保健師探偵イモージェンが魅力的

f:id:honzaru:20231205075857j:image

ウィンダム図書館の奇妙な事件』ジル・ペイトン・ウォルシュ 猪俣美江子/訳

東京創元社創元推理文庫] 2023.12.06読了

 

健室の先生って、優しかったよなぁ。小学校でも中学校でもその記憶はある。私は保健室に入り浸る生徒ではなかったけれど、包容感のあるあの部屋と先生の雰囲気はどこでも同じなのだろうか。若くて綺麗な先生であれば男子生徒は甘えるだろうし、ある程度歳をとった方であっても、その独特の優しさには安心感を覚える。

 

の小説の主人公は、セント・アガサ・カレッジの学寮付き保健師イモージェン・クワイである。小中学校の保険の先生とは少し異なる立ち位置だが、やることは同じで、主な仕事は学生たちの心と体の健康管理である。

 

のカレッジには図書館が2つある。通常の図書館と、17世紀に寄贈された私設図書館「ウィンダム図書館」である。この図書館で、一年生の男子生徒フィリップ・スケローが殺されているのが発見され、イモージェンは友人であるマイク・パーソンズ巡査と一緒に事件の真相解明に乗り出し、そしてまぁ色々とめくるめく展開になりーの、というストーリーである。

 

健師であるが故に、寄り添った形で学生たちのフォローをするイモージェンがとても頼もしくて愛らしい。こんな保険の先生がいたら何でも話してしまうだろうな。心の拠り所になりそう。やんちゃで生意気そうだけどかわいい学生たちを見ていると、助けてあげたくなるし学生たちもまたイモージェンに心を開いていく。なんと魅力的な主人公だろう。市民と警察がこんなにもべったりなのはあり得ないだろうとは思うけれど。

 

国古典ミステリ!やはり大好物で思う存分楽しめた。作中にP・D・ジェイムズやルース・レンデルの名前が出てくることからもわかるように、著者の目指すミステリのイメージがわかる。とはいってもジェイムズ作品まで込み入ってるわけではなく(レンデル作品は読んだことないけれどジェイムズ作品に似ているとよく聞く)、現代の英国作家でいうとL・A・ラーマーよりは複雑な感じで、何しろちょうど良いのだ。続編が最近刊行されているようなので読むつもり。