書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(た行の作家)-谷崎潤一郎

『猫と庄造と二人のおんな』谷崎潤一郎|猫に翻弄される人間たち

『猫と庄造と二人のおんな』谷崎潤一郎 新潮社[新潮文庫] 2023.8.13読了 昭和8年に『春琴抄』を書いた谷崎潤一郎さんは翌年にこの短編を刊行した。文庫本で150頁にも満たないこの小説はさらりと読み終えられるので、谷崎文学をこれから読もうとしている人…

『少将滋幹の母 他三篇』谷崎潤一郎|母への想い、妻への妄執

『少将滋幹(しげもと)の母 他三篇』谷崎潤一郎 中央公論新社[中公文庫] 2023.3.11読了 谷崎潤一郎さんの代表作のひとつである『少将滋幹の母』と他3つの短編が収められた豪華な文庫本である。小倉遊亀さんという画家による原画からとりなおした挿絵がた…

『吉野葛・盲目物語』谷崎潤一郎|中期の名作をどうぞ

『吉野葛・盲目物語』谷崎潤一郎 新潮文庫 2021.7.9読了 谷崎さんの中期の2作品が収められている。古き良き古風な日本語の文体で、一見とっきにくいのに滑らかで麗しい。2作品ともタイトルだけは知っていたが、内容は想像とかなり違っていた。 『吉野葛』 か…

『陰翳礼讃・文章読本』谷崎潤一郎|日本の文化と日本語の美しさ|随筆を通俗語にしようよ

『陰翳礼讃・文章読本』谷崎潤一郎 新潮文庫 2021.3.28読了 谷崎潤一郎さんの『陰翳礼讃』『文章読本』という2大随筆と、他に短い作品が3つ収録された随筆集である。どの作品も素晴らしい文章で散りばめられている。日本の文化と日本語の美しさが、これまた…

『春琴抄』谷崎潤一郎|春琴と佐助にしか見えないもの

『春琴抄』谷崎潤一郎 ★ 新潮文庫 2021.2.16読了 私は見逃してしまったが、NHKの番組『100分de名著』で島田雅彦さんが『春琴抄』を解説したらしい。谷崎さんの作品では5本の指に入るほど有名な作品だが私はいまに至るまで未読だった。 同じような出だしの小…

『蓼喰う虫』 谷崎潤一郎 / 夫婦の在り方はさまざま

『蓼喰う虫』 谷崎潤一郎 小出楢重/画 岩波文庫 2019.3.3読了 谷崎潤一郎といえば、『痴人の愛』『細雪』『卍』『春琴抄』が抜群に有名であるが、『蓼喰う虫』を読んでいる人はそう多くはないかもしれない。私もタイトルを知っていただけで初読みである。「…