書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(や行の作家)-吉村昭

『ふぉん・しいほるとの娘』吉村昭|激動の時代を生き抜いた女たち|長崎に想いを馳せながら

『ふぉん・しいほるとの娘』上下 吉村昭 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.07.23読了 しいほるとって、、シーボルトのことだよね?どうして平仮名で書かれているのかと真っ先に疑問に思う人がほとんどだろう。シーボルトが初めて日本に訪れて名を名乗ったとき、日…

『仮釈放』吉村昭|更生の意味、保護司のあり方

『仮釈放』吉村昭 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.06.02読了 つい先日、吉村昭さんの作品を読んだばかりだが、中毒性があるのかまた読みたくなった。本当は長崎を舞台にしたある小説を探していたが、書店にあったその文庫本の表紙が破れかけていた(こういうのは…

『羆嵐』吉村昭|クマによる被害がよくニュースになるこの頃

『羆嵐(くまあらし)』吉村昭 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.05.09読了 クマってぬいぐるみにすると一番かわいい動物だと思う。クマのプーさんを筆頭にして、ディズニーランドのダッフィー、ご当地ゆるキャラくまモン、映画のおやじ熊さんTed、テディベアなん…

『関東大震災』吉村昭|天災には怒りや恨みをぶつける相手がいない

『関東大震災』吉村昭 文藝春秋[文春文庫] 2023.12.17読了 今年は関東大震災から100年が経ったということで、装い新たに(というか文庫カバーの上にぐるりと更なるカバーがかけられている)書店に並べられていた。天災は人間の力で防ぎようがない。それで…

『高熱隧道』吉村昭|自然の脅威、人間との確執

『高熱隧道』吉村昭 新潮社[新潮文庫] 2023.8.27読了 数年前に黒部・立山アルペンルートを含めて富山を旅行した。黒部ダムの勢いよく放出される水に圧倒された。なかでも、立山の景色の素晴らしさが本当に忘れがたく、なんなら日本で観光した景色で一番と…

『破船』吉村昭|本屋大賞「発掘部門」隠れた名作

『破船』吉村昭 ★ 新潮社[新潮文庫] 2022.4.13読了 本屋大賞に「発掘部門」なんていつからあったのだろう?国内小説部門と翻訳海外小説部門しか知らなかった。大賞となった国内小説『同志少女よ、敵を撃て』と海外小説『三十の反撃』はたまたま読み終えて…