書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(ま行の作家)-三島由紀夫

『禁色』三島由紀夫|女性への復讐、なれの果て

『禁色』三島由紀夫 新潮文庫 2022.1.1読了 旅に出る時、帰省する時、遠出をする時にお供にする本はいつも非常に迷うものだ。列車や飛行機などの移動中を始めとして、読書にかける時間は結構多い。持っていった本に失敗すると途方もなく残念になるから、間違…

『金閣寺』三島由紀夫|美の感じ方と燃え盛る炎

『金閣寺』三島由紀夫 新潮文庫 2021.6.3読了 中学生の時、関東に住む私の修学旅行先は「奈良・京都」だった。修学旅行の思い出を手作り絵本にまとめるという課題が出ており、私は「思い出に残った場所ベスト10」として見開き頁ごとに10位から始まりクライマ…

『鏡子の家』三島由紀夫/鏡を通して自己をみつめる

『鏡子の家』三島由紀夫 新潮文庫 2021.1.18読了 三島由紀夫さんの『鏡子の家』を再読した。以前読んだのは10年以上前で、主な登場人物と全体の雰囲気をなんとなく憶えている程度だった。三島作品の中ではあまり評判が良くないと言われているが、私としては…

『ペルソナ 三島由紀夫伝』猪瀬直樹/生と死に誰よりも執着していた

『日本の近代 猪瀬直樹著作集2 ペルソナ 三島由紀夫伝』猪瀬直樹 ★ 小学館 2020.12.12読了 三島文学が大好きと豪語しているわりには、彼のことを外から評したものをちゃんと読んだことがなかった。特集を映画やテレビで観たり、文芸誌などで読む程度だ。こ…

『手長姫 英霊の声 1938-1966』三島由紀夫/どんな捉え方をしても彼は魅力的

『手長姫 英霊の声 1938-1966』三島由紀夫 新潮文庫 2020.11.30読了 三島由紀夫さんの命日は11月25日、東京・市ヶ谷の自衛隊駐屯地で割腹自殺をした。今年は没後50年ということもあり、三島さんに関する映画が上映され、テレビなどでも特集を目にすることが…

『獣の戯れ』三島由紀夫/フィルター越しに見る三角関係

『獣の戯れ』三島由紀夫 新潮文庫 2020.10.13読了 当時は新潮社の雑誌に連載されたようだが、三島さんの書き下ろし小説として5作目の中編小説である。タイトルから想像するに、色香漂う官能的な作品かと思っていたがそういうわけでもなかった。しかし言葉と…

『太陽と鉄・私の遍歴時代』三島由紀夫/肉体と精神・三島たらしめるもの

『太陽と鉄・私の遍歴時代』三島由紀夫 中公文庫 2020.8.22読了 三島由紀夫さんの自伝的エッセイが2篇と、自衛隊駐屯地で自決する少し前のインタビューが収録されている。まぁ、2篇の極端なことったらない。なるべく我慢して巻末の解説は最後に読もうとして…

『不道徳教育講座』三島由紀夫/叡智を感じるエッセイ

『不道徳教育講座』三島由紀夫 角川文庫 2020.7.22読了 いやはや、三島さんは何を書いても一級品だ。有名すぎるこのエッセイ、実はまだ未読だったのだが、今年のカドフェスで店頭に並べてあったのを手に取り購入した。これが、なんともウィットに富んでいて…

『絹と明察』三島由紀夫/ワンマン経営者と社員らの関係

『絹と明察』三島由紀夫 新潮文庫 2020.5.27読了 近江絹糸(おうみけんし)争議とは、昭和29年に実際に起こった大阪の絹糸紡績の労働人権争議である。近隣の高校卒業生を強制的に入社させて工場で働かせたり、結婚したら女性は退社、男性も転勤か退社、寮生…

『美しい星』三島由紀夫/人間の美しさを宇宙から説く

『美しい星』三島由紀夫 ★ 新潮文庫 2020.4.14読了 日本で1番美しい文章を書く人は誰かと聞かれたら、加賀乙彦さんや辻邦生さんも迷うのだが、やはり私は三島由紀夫さんと答えるだろう。もちろん、彼の描くストーリーや思想に心を突き動かされるのだが、文章…

『戦後日記』 三島由紀夫 / 彼の華やかな日常とこだわりの数々

『戦後日記』 三島由紀夫 中公文庫 2019.7.28読了 三島由紀夫さんの日記作品集が中公文庫から刊行された。昭和23年から42年までの間に、日記の体裁で書かれたエッセイを集めたものである。三島さんの小説は大好きでよく読むのだが、小説以外をじっくり読んだ…