書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(さ行の作家)-島田雅彦

『時々、慈父になる。』島田雅彦|ミロクくんと一緒にお父さんも成長する

『時々、慈父になる。』島田雅彦 集英社 2023.7.5読了 3年ほど前に島田雅彦さんの自伝的小説『君が異端だった頃』を読んだ。自身のことを「君」として、いささか(というかかなり)自己愛・自信に満ちた語りが島田さんらしかった。今回の自伝的小説は一人息…

『絶望キャラメル』島田雅彦|町おこしのために立ち上がれ

『絶望キャラメル』島田雅彦 河出書房新社[河出文庫] 2022.4.18読了 軽快な文体の青春コメディといったところだろうか。高校野球の場面が多かったから青春スポーツ小説の印象も強い。島田さんらしく政治要素もふんだんに盛り込まれている。登場するキャラ…

『カタストロフ・マニア』島田雅彦/かなり文学よりのSFか

『カタストロフ・マニア』島田雅彦 新潮文庫 2020.12.17読了 最近の島田雅彦さんは未来を描くSF・ディストピアチックな作品が多くなってきたように思う。私の中ではどちらかといえば『退廃姉妹』や『傾国子女』のような大正・昭和の女性を描いた古典的なイメ…

『君が異端だった頃』島田雅彦/いけ好かないけどやりおるな

『君が異端だった頃』島田雅彦 ★ 集英社 2020.3.1読了 「君」とは作者である島田さん自身のことで、この本は自伝的私小説である。一度島田さんの対談を聴きに行ったことがあるが、巧みな話術と知性、そしてあのルックス、やはりモテそうな人だと思った。この…

『人類最年長』島田雅彦 / 近代日本の生き証人

『人類最年長』島田雅彦 文藝春秋 2019.10.8読了 まるで、日本の近代160年史を読んだような感覚だ。1861年にこの世に生を受けた宮川麟太郎が、時代と共に生き、159歳になって病院に運ばれたことをきっかけに、その時担当になった看護婦に人生を話すというス…