書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(な行の作家)

『ガダラの豚』中島らも|超常現象てんこもり

『ガダラの豚』Ⅰ Ⅱ Ⅲ 中島らも 集英社文庫 2021.3.16読了 中島らもさんといえば、アル中で躁鬱家、なかなかはっちゃけた人というイメージがある。小説家、エッセイスト、放送作家である彼は『今夜、すべてのバーで』で吉川英治文学新人賞を受賞した。私は過…

『白いしるし』西加奈子/その人の作品を好きになる

『白いしるし』西加奈子 新潮文庫 2021.1.9読了 西加奈子さんの直球恋愛小説。それも、苦しい苦しい恋愛だ。32歳独身、絵を描きながらバイトをして暮らす夏目は間島くんに恋をする。間島昭史は、作中ではずっと『間島昭史』と『』つきで表されている。まるで…

『流浪の月』凪良ゆう/当事者にしか真実はない

『流浪の月』凪良ゆう 東京創元社 2020.8.8読了 凪良ゆうさんは、もともとBL(ボーイズラブ)小説を書いていた方。あんまり合わないだろうなと思い、本作は今年の本屋大賞受賞作にも関わらず読むつもりはなかった。でも、書店にいつまでもこうも積み上げられ…

『さくら』西加奈子/愛とアイデンティティ

『さくら』西加奈子 ★ 小学館文庫 2020.7.27読了 西加奈子さんの小説の中では、おそらく刊行数の多さは5本の指に入ると思う。西さんと言えば直木賞受賞作『サラバ!』が圧倒的すぎて、他の作品が霞むように見えてしまう。そんなことないのに。でも、この『さ…

『あなたが消えた夜に』中村文則/歪んだ愛と狂気

『あなたが消えた夜に』中村文則 毎日文庫 2020.4.27読了 久しぶりに中村文則さんの小説を読んだ。全編を通して漂うほの暗い感じは今回も健在のようだ。主人公が刑事であるが、中村さんが警察組織を題材にするのは珍しいような気がする。 連続通り魔達人事件…

『夜の歌』なかにし礼/過去の作品と重なる自伝小説

『夜の歌』上下 なかにし礼 講談社文庫 2020.2.11読了 なかにし礼さんの自伝的小説だ。26歳で入院した時にゴーストという存在に初めて出会い、過去と現在とを行き来するストーリーになっている。この作品は雑誌に掲載されたようだが、書き始めたのも、度重な…

『奇蹟』中上健次/骨太で濃密な文体を堪能する

『奇蹟』中上健次 河出文庫 2019.12.12読了 この本は、私の家にある「これから読む本たち」の箱に3~4年前から入っていた。いわゆる積読状態。一つ前に読んだ対談集に、中上健次さんの名前がちらほら挙がっていたので、気になって読むことにした。なんでも…

『壁の男』貫井徳郎/才能は関係ない、絵は描いた人の心を表す

『壁の男』 貫井徳郎 ★ 文春文庫 2019.11.16読了 小説の中に絵画作品が出てくるとき、私は大抵、こんな絵だろう、と勝手に想像してしまう。今回の、壁に絵を描き続ける男の絵は、アンリ・マティスのような絵か、はたまた話題のバスキアのような絵か。太い線…

『赤い月』 なかにし礼 / あなたは生きることの天才だ

『赤い月』 上・下 なかにし礼 ★ 岩波現代文庫 2019.7.31読了 波子たちが牡丹江からハルビンへ向かう軍用列車に乗っている20日間の出来事が壮絶である。汽車が止まる度に、ソ連軍の攻撃からなんとか逃げ、満鉄社員に金目の物をあげて列車を動かしてもらい、…

『椿宿の辺りに』 梨木香歩 / 少女の感性で描かれる大人のための小説

『椿宿の辺りに』 梨木香歩 朝日新聞出版 2019.6.11読了 一体、どんな話なんだろう?そもそも、「椿宿」って何と読むのだろう、つばきやど?つばきしゅく?地名であろうか。帯に書かれてあるキャッチコピーも、てんでばらばらな単語が並び、よくわからない感…

『彼女に関する十二章』 中島京子 / 今を大事に丁寧に、自分の考えをしっかり持つ

/ 『彼女に関する十二章』 中島京子 中公文庫 2019.4.9読了 背表紙に、「ミドルエイジを元気にする上質の長編小説」とある。確かに(というかおそらく)50代くらいの女性にとって、ある!ある!という気持ちになるようなエピソードが続く。私にはしばらく先…

『蠕動で渉れ、汚泥の川を』 西村賢太 / これぞ西村さんの私小説、人間らしさに溢れている

『蠕動で渉れ、汚泥の川を』 西村賢太 角川文庫 2019.3.24 読了 蠕動(ぜんどう)、あまり目にしない単語である。虫が付いているから虫の動きに関することだろうか。調べてみると、①ミミズなどの虫が身をくねらせてうごめきながら進むこと。②筋肉の収縮波が徐…