書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『旅をする木』 星野道夫 / 人生をどうよく生きるか

『旅をする木』 星野道夫 文春文庫 2019.6.21読了 大型書店に行くと、たいてい文春文庫の平置き棚の前にベストセラーとして積み上げてある。だから、この本の存在は随分前から知っていて、いつか読みたいとは思っていた。しかし、紀行文・短編であるためか、…

『慈雨』 柚月裕子 / 罪に向き合いめぐみの雨で全てを洗い流す

『慈雨』 柚月裕子 集英社文庫 2019.6.19 読了 慈雨(じう)・・・万物をうるおし育てる雨。また、ひでりつづきのときに降るめぐみの雨。 柚月裕子さんの作品は、よく目にしていたが実際に読むのは初めてであった。刑事もの、ハードボイルドな作風というイメー…

『パピヨン』 アンリ・シャリエール / 自由を求めて

『パピヨン』 上・下 アンリ・シャリエール 平井啓之 / 訳 河出文庫 2019.6.16 読了 私の中で脱獄ものと言えば、吉村昭さんの『脱獄』、ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』、そして金字塔、アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト博』である。ど…

『椿宿の辺りに』 梨木香歩 / 少女の感性で描かれる大人のための小説

『椿宿の辺りに』 梨木香歩 朝日新聞出版 2019.6.11読了 一体、どんな話なんだろう?そもそも、「椿宿」って何と読むのだろう、つばきやど?つばきしゅく?地名であろうか。帯に書かれてあるキャッチコピーも、てんでばらばらな単語が並び、よくわからない感…

『改訂完全版 占星術殺人事件』 島田荘司 / 改訂いりますか?そして探偵ものは再読には向かない

『改訂完全版 占星術殺人事件』 島田荘司 講談社文庫 2019.6.6読了 自分が好きそうな本を選んで欲しいと言われて、何冊か人に選んだ本の中の一冊である。どうやら、あまり気に入らなかったのか読む気配がない。たいてい人に本を勧める時は、その人がよく読ん…

『わたしたちが孤児だったころ』 カズオ・イシグロ / 自分にとっての真実を見つける

『わたしたちが孤児だったころ』 カズオ・イシグロ 入江真佐子/訳 ハヤカワepi文庫 2019.5.30読了 カズオ・イシグロさんの小説はじっくりと時間をかけて読む。イシグロさんが本当に伝えたいことがどこに潜んでいるかわからないから。訳文であっても損なわれ…