書に耽る猿たち

読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる話

国内(か行の作家)-窪美澄

『たおやかに輪をえがいて』窪美澄|自分の人生を自信を持って生きたい

『たおやかに輪をえがいて』窪美澄 中央公論新社[中公文庫] 2023.2.6読了 自分とは立場が異なるのに、どうしてこんなにも共感できるんだろう。絵里子の行動、感情に他のなにものかが入り込む余地がない。おそらく、最初から絵里子の一挙手一投足、感情の全…

『アニバーサリー』窪美澄|料理と子育て、女性の社会進出

『アニバーサリー』窪美澄 新潮社[新潮文庫] 2022.10.15読了 読む前に想像していたのは、現代女性の悩みや生き方が描かれた小説だったのに、75歳でマタニティスイミングを教える昌子の生い立ちが、つまり昭和の初め頃の描写が冒頭からかなり(全体の3分の1…

『いるいないみらい』窪美澄|いろいろな家族のかたち

『いるいないみらい』窪美澄 KADOKAWA[角川文庫] 2022.6.19読了 タイトルの「いる」「いない」とは、自分に子供が「いる」か「いない」かの未来のことである。つまり、赤ちゃんを産むか産まないか、産めるか産めないか、家族をつくるかつくらないか、そう…

『朱より赤く 高岡智照尼の生涯』窪美澄|苦難に満ちた波瀾万丈の人生

『朱(あか)より赤く 高岡智照尼の生涯』窪美澄 小学館 2022.3.6読了 幼い頃叔母に育ててもらったみつ(後の高岡智照)は、12歳の時、産みの父親に騙され舞妓になるよう売られてしまった。舞妓、芸妓を経て、社長夫人になり、さらに女優や文筆業まで行う。…

『ふがいない僕は空を見た』窪美澄|上を向くしかないんだなって

『ふがいない僕は空を見た』窪美澄 ★ 新潮文庫 2021.12.11読了 おそらく窪美澄さんの名前を世間に広めたのはこの作品だと思う。2010年に、収録作「ミクマリ」でR-18文学賞、そして「ミクマリ」も含めたこの『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞を受賞、…

『さよなら、ニルヴァーナ』窪美澄|人間の中身を見たい

『さよなら、ニルヴァーナ』窪美澄 文春文庫 2021.10.16読了 衝撃を受けた事件といえば、私の中ではオウム真理教による地下鉄サリン事件、4人の幼児・幼女を誘拐し殺人した宮崎勤事件、そして、神戸児童連続殺傷事件である。子供を殺し首を小学校の門に置い…

『トリニティ』窪美澄|何かを捨ててより良いものを拾って生きる

『トリニティ』窪美澄 ★ 新潮文庫 2021.9.1読了 トリニティとは、キリスト教でいう三位一体のことだ。三角形に表してバランスを保つような図をたまに見るような気がする。昔仕事でトリニティをサブタイトルにした商品を売ったことを思い出した。この作品では…

『やめるときも、すこやかなるときも』窪美澄/過去も未来も受け入れる

『やめるときも、すこやかなるときも』窪美澄 集英社文庫 2020.7.4読了 書店ではよく目にするが、窪美澄さんの小説を読むのは実は初めてだ。なんとなく学生さんや若い人がターゲットかなと。そして本作はジャニーズの誰か(キスマイの藤ヶ谷くんだったかな?…